2012年01月30日

全豪オープンテニス決勝の「絶叫対決」!?試合中に選手が発する大声に規制は可能?

1月29日に行われた全豪オープンテニス女子決勝。

4年ぶりの優勝を目指した第4シードのマリア・シャラポア(ロシア)と、第3シードのビクトリア・アザレンカ(ベラルーシ)の一戦は、アザレンカが6−3、6-0のストレートで会心の勝利を飾り、ベラルーシ出身の女子テニスプレーヤーとして初の4大大会優勝を果たした。


ところが、この試合、別の意味で注目を集めていたようだ。


シャラポア、アザレンカの両者はともに、ボールを打つ瞬間に大きな声を出すことで有名な選手。

決勝戦は、両者の気迫の大きさを物語るかのように、彼女たちの絶叫が響き渡ったという。


MARIA SHARAPOVA vs VICTORIA AZARENKA SCREAMING CHAMPIONSHIP STANFORD 2010

(シャラポア選手とアザレンカ選手の試合中の大声を比較した動画。両者ともサーブのときもレシーブのときも悲鳴のような声を出しています。昨年の対戦の様子Victoria Azarenka Vs. Maria Sharapova 2011 1/2))を確認みると、まさに「絶叫対決」といった印象。両者の気迫が伝わってきますね。)



ちなみに、シャラポア選手の声の大きさについては、これまで何度も物議を釀している。


■ 女子ランキング一位の選手がシャラポア選手のうなり声に苦情


昨年(2011年)11月、シャラポア選手のボールを打つときの大きな声(うなり声)に対して、女子プロテニスで世界ランク第一位(当時)のキャロライン・ウォズニアッキ選手が、「(シャラポア選手のうなり声で)ボールの速度が正確に判断できない」と苦情を訴えている。


さらに、この選手は、「意図的に大きな声を出す選手もいる、禁止すべき」と、こうした行為自体に対して規制を求めているようだ。

(参考:シャラポワうなり声100デシベル 地下鉄車内騒音並みの是非(Yahooニュース:NEWポストセブン配信))



また、この記事では、シャラポア選手が試合中に発した「うなり声」の大きさを測定した結果、100デシベルを超えていたと指摘している。

100デシベルといえば、地下鉄の車内や列車が通過するときの高架下の騒音に匹敵するほどの音。ほとんどの人がうるさく感じるレベルだ。


相手の打球音を聞こうと耳をすませている相手選手にとっては、さらに大きく聞こえるに違いない。

ウォズニアッキ選手のいうように、「(ボールがラケットに当たる音がかき消されて)ボールの速度が判断できない」という問題の他に、音による心理的な効果もあるだろう。 彼女の言い分は十分に理解できる。



2010年には、ウォズニアッキ選手の言い分を裏付けるような研究が、アメリカとカナダの大学の共同研究チームによって行われている。


■ ハワイ大学の研究者は、「不当な優位性」があると指摘


2010年、テニス選手がボールを打つときに発する「うなり声」が、相手選手の反応や判断に影響を与えるかについての研究が、カナダのブリティシュ・コロンビア大学と、アメリカのハワイ大学の共同チームによって行われた。


この研究では、シャラポア選手のように、試合中に大きなうなり声を発する選手とそうでない選手のビデオを学生に見せ、打ったボールの方向などを判断してもらうというテストを実施している。


この結果、「うなり声」を発せられると、被験者の学生は、ボールに対する反応が遅くなったほか、打球の方向についても判断を誤る確率が高まったという。


この実験結果を受けて、この研究を担当したハワイ大学のスコット・シネット氏は、「プロ選手の中には、ボールがラケットに当たるときの音で、ボールの回転と速さを判断しようとする人もいる」と前置きした上で、うなり声はその音をかき消してしまうほか、単純に注意を散漫させる原因にもなり得ると指摘している。

さらに、シネット氏は、うなり声で知られるラファエル・ナダル、マリア・シャラポワの両選手について、彼らは「不当な優位性」を与えられている可能性もあるとコメントしている。

(参考:テニス選手のうなり声、相手の反応や判断力に影響も=研究(ロイター))



この記事には実験に参加した学生のテニスの腕前がどの程度なのかについての記述はないので、プロ選手がどの程度影響を受けているのかは分からないが、選手が試合中に大声を発することの是非を考える上で、重要なデータといえるだろう。


Who SCREAMS louder? Azarenka vs Wozniacki [HD]

(2010年のアザレンカ選手の絶叫が収録された動画。当時のアザレンカ選手は、ボールがアウトしても絶叫しています。最近の試合ではこの頃よりも声が小さくなり、落ち着いてきている印象を受けますが、周囲から注意されるようになった影響もあるのかもしれませんね。)




一方、試合中の「うめき声」については、次のような見方もできる。



■ アスリートが力を出し切るために用いる「シャウト効果」の可能性も


スポーツの世界でよく知られている理論に「シャウト効果」というものがある。


普段、人間は肉体の安全のために無意識に脳がリミッターをかけ、本来持っている筋力の70〜90%程度しか出さないように制御し、常に余力を残した状態で活動しているといわれている。


しかし、力を出しきりたいときに大きな声を出せば、一時的にリミッターを解除でき、肉体が本来持っている力の100%近くを引き出すことができる。


これが「シャウト効果」であり、 ハンマー投げなどの投てき種目のアスリートには、これを実践している者も多いという。

(参考:シャウト効果で全力を引き出す(DailyPortal)シャウト効果(心と体の秘密))


精密なコントロールを必要とするスポーツでは、「シャウト効果」を使うと逆にコントロールを損ねる可能性も高いことから、あまり一般的ではないようだが、シャラポア選手のように力強いストロークで相手を圧倒するスタイルの選手にとっては、有効な手段と考えられる。



とすると、必ずしも相手を妨害する目的で、試合中に大声を発しているとは断定できなくなるわけで、「うなり声」を規制を求めている側の「意図的に大声を出す選手がいる」という主張も通りにくくなる。


また、ルール変更によって「うなり声」封印された選手は、本来の実力を出せなくなる可能性も出てくるだけに、規制すると逆に公平性を欠くことにもなりかねない。



相次ぐ苦情や非難の声を受けて、女子テニス協会(WTA)は、試合中の「うなり声」への対策を検討中のようですが、実際に規制するのは難しいように思えます。


いずれにしても、ルールの変更は今まで上位だった選手が転落する場合もあるだけに、選手や指導者への聞き取り調査や科学的な検証を行うなど、慎重に対応してほしいですね。


参考サイト

アザレンカ初V!シャラポア撃破(デーリースボーツオンライン)

アザレンカが全豪オープン優勝、世界ランク1位へ(AFP)

騒音レベルの代表例(noboru)

posted by 残照 at 06:10| Comment(1) | スポーツ | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月28日

恋愛成就の秘訣は錯覚を起こさせること!?小屋型の巣を作ることで知られるニワシドリのオスの求愛行動の秘密とは?

1月19日、オーストラリアに生息し、ニワシドリの雄が、人間顔負けの「錯視」を駆使して雌を魅了することを論じた論文が、米科学誌サイエンスの掲載された。

ニワシドリ(英:Bower bird)は、厳密にはニワシドリ科の鳥の総称で、日本ではアズマヤドリまたはコヤツクリとも呼ばれている。


オーストラリアやニューギニア島の森林や疎林に生息し、雛の育児全般を雄が担当することを特徴とする、20〜40cm程度の小さな鳥だ。

ニワシドリの雄は、繁殖期になると、枯れ枝や落ち葉が散らばった場所をきれいに取り除き、その枯れ枝や落ち葉を利用して大きな小屋型の巣をつくり、雌を迎え入れる準備をする。

このとき、雄は雌の気を引くために、草花や木の実のような植物や、人間の落として行った空き缶やお菓子の袋、プラスチック製品といったゴミを拾ってきて、閑散としていた庭をまるで『庭師』のように飾り付ける。

(参考:ニワシドリの求愛(NATIONAL GEOGRAPHIC日本語版))


Satin Bower bird[photo by Brett Donald at wikipedia commons]

Satinbowerbirdmale.jpg

(写真は、ニワシドリ科の一種。日本ではアオアズマヤドリ呼ばれている。 一般に、ニワシドリは果実や種子などの植物食が中心だが、ときには昆虫も食べるという。)



これまで、ニワシドリの雌が、雌を気を引いて巣の中に誘い入れるために、様々な小道具を使うことや、巣に迎え入れた雌に対して、小道具を使った『求愛ダンス』を披露することは知られていた。

しかし、それは他の動物が行っているような一般的なものとして考えられてきたようだ。

今回の研究は、こうした求愛行動を分析したもので、ニワシドリの雄の特異な生態を知る上で、大きな成果といえるようだ。




一生懸命働いて生活の基盤を作り、女性の気を引くために奔走。

そして、努力が実り、子どもが生まれてからは、「イクメン」として子育てに奮闘する。

こんなニワシドリの雄の生態は、なんだか他人ごとと思えない「人間味」すら感じられますね。



一方、記事では、ニワシドリが用いる『錯視』という現象について簡単に述べられていますが、これはどのようなものなのでしょうか。


◆ 同じ大きさなのに大きく見える!?ニワシドリが用いる『エビングハウス錯視』とは?


『錯視』とは、視覚に関する錯覚のことで、要は「目の錯覚」のこと。

今回、ニワシドリが使っているとされてるのは、基本的な『遠近法』と『エビングハウス錯視』だという。


『遠近法』のほうは、「近くのものが大きく見えて遠くのものが小さく見える」ようにする手法で、学校の美術の時間などでよく耳にしている言葉だが、『エビングハウス錯視』のほうは、一般にはあまり知られていない。

では、『エビングハウス錯視』とはどのようなものなのだろうか。


■ エビングハウス錯視とは?


エビングハウス錯視』とは、ドイツの心理学者ヘルマン・エビングハウスにちなんで命名された錯視の一つで、一般に、その現象は以下のような図形で説明されている。


エビングハウス図形[photo by wikipedia commons(public domain)

650px-Mond-vergleich.svg.png

(中心のオレンジ色の円は同じ大きさ。周囲の円の大きさによって真ん中の円の大きさが小さく見えたり、大きく見えたりする。)


Ch 004: illusions: Ebbinghaus

(エビングハウス錯視を説明した動画。映像で見ると分かりやすいですね。)



このように、同じ大きさの図形でも、大きいものを周りに置かれると小さく、小さいものを周りに置かれると大きく見える。

このような錯視のことを『エビングハウス錯視』といい、円形、または球形のものに対して最も顕著に現れるという。


■ エビングハウス錯視を発生させる仕組み!?視覚心理学における「対比」とは?


一方、『エビングハウス錯視』が発生する仕組みは、視覚心理学でいうところの『対比(対比効果)』と呼ばれる現象で説明される。


対比」とは、「異なる性質または異なる量のものを並べると、その違いが著しくなり、反対の方向に変化して知覚される現象」のことをいい、色や大きさ、形など様々な性質に対してこの現象が起こる。


『エビングハウス錯視』の場合は、「大きさ」に対してこの対比効果があらわれた例と考えられる。

また、この他にも色のついた図形やその配置に関する対比効果もあるようで、こちらもおもしろい錯視を起こす要因となっているようだ。

(参考:色の知覚効果(Information Space of psychology))


■ いろいろな錯視、そして錯聴とは?


今回調べた『エビングハウス錯視』の他にも様々な種類の錯視あり、以下のサイトで様々な錯視を体験できます。

また、耳の錯覚である『錯聴』もいくつか紹介されていてとても興味深い内容のサイトになっています。


イリュージョンフォーラム

http://www.brl.ntt.co.jp/IllusionForum/index.html



このサイトで紹介されている錯覚の数々を体験すると、人間にとって見えること、聞こえることの意味を考えさせられます。

こうした体験をすることは、新たな視点で物事を見たり、聞いたりするきっかけになるかも知れませんね。



知覚の現象学 1


参考サイト

ニワシドリ科(wikipedia)

Bowerbird(wikipedia:英語)

錯視(wikipedia)

エビングハウス錯視(wikipedia)

対比と同化(心理学の豆知識)

posted by 残照 at 23:49| Comment(0) | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年01月26日

春節のフィリピンでも行われる火吹き芸!?ギネス記録も樹立したアメリカのパフォーマーのスゴイ技とは?

1月23日に、中国の正月(旧正月)にあたる春節が始まった。

中国各地や世界中に点在するチャイナタウンでは、春節を祝うイベントが開かれ、盛り上がっている。

上の写真は春節の前日の22日、お祝いムードに包まれたフィリピンの首都マニラのチャイナタウンで行われた火吹きパフォーマンスの様子を撮影したもの。


パフォーマンスを披露している男性は、平然と炎を口から放射していますが、身体は大丈夫なのでしょうか。


■ まさに命懸け!?火吹き芸における12のリスクとは?


この火を吹く芸は、一般に『火吹き(Fire breathing)』と呼ばれているもので、数あるパフォーマンス中でも高いリスクを持つものの一つ。

通常、着火性の液体燃料を口に含み、これを吹き出すと同時にライターや松明で着火するという単純な芸で、勇気を出せば誰でもできる。


とはいえ、この誰でもできるような芸も、安全に実施するのは意外に難しいようで、wikipediaには、『火吹き』における事故について、いくつものリスクが列挙されている。


1.死亡
2.重症の火傷
3.発ガン
4.歯科関係の傷病
5.胃潰瘍
6.燃料の毒性
7.化学性肺炎・急性呼吸促進症候群
8.乾咳
9頭痛,めまい,悪寒
10.下痢,吐き気, 胃痛
11.唇の炎症
12.乾燥肌・典型的な火傷症状

(wikipedia 『火吹き』より引用。番号は著者。)


特に危険なのは、火を吹いている最中に、誤って息を吸い込んでしまうことで、気道や肺を焼いてしまいそのまま死亡する場合もあるという。

また、実行するときの風向きにも留意する必要があり、火吹きの最中に逆風にさらされると、思わぬ大やけどを負う危険もある。

(上記の1,2,11は火を吹く動作によって生じる可能性のある事例)


一方、火を吹くために口に含む燃料による間接的なリスクもある。

『火吹き』で使われる主な燃料は、メタノールやエタノールなどのアルコール類や、ナフサ・ブタン・プロパン、ガソリンや灯油といった化石燃料由来の化学物質類だが、これらには、多かれ少なかれ、人体に悪影響を及ぼす有害性物質が含まれている。

このため、口に含んだときに誤って飲み込んでしまったり、口内の粘膜や傷口などから吸収されたりすると、様々な健康被害が起こるという。

(上記の3〜10は口の中に有害物質を含むことによって起こる症状と考えられる)


火を吹く男(photo by wikipeidia commons[public domain]) 。

Synskis-Firebreathing-I.jpg

(火を吹く男の写真。やけどを避けるために長いたいまつで点火しているようです。)


当然、パフォーマーは、安全に実施するためにできるだけ毒性の低い燃料を選んだり、風向きを確認したりするなど、安全には十分に配慮して行うが、それでも死や健康被害へのリスクを完全に排除できるわけではない。まさに命懸けの芸といえるだろう。



普段何気なく見てしまう『火吹き』芸。

しかし、その見た目の派手さとは裏には、まさに体を張った命懸けの挑戦がありました。

こういうことを知ってしまうと、次からはなんとなく厳かな気持ちで見てしまいますね(^_^;)


■ 昨年、ギネス新記録を樹立!?炎で幻想的な世界を演出するアメリカの凄腕のパフォーマーとは?


一方、ショービジネスの国アメリカには、炎を駆使したパフォーマンスで人々を魅了する凄腕のパフォーマーがいる。


彼は、アメリカ・ラスベガスなどで活躍するイリュージョニストのAntonio Restivo氏。

イリュージョニストの肩書きを持つ彼だが、当然、使っているのは本物の炎。


彼はショーの中で『火吹き』のパフォーマンスも披露し、世界中で『火吹き』芸の指導もしているという、まさに『火吹き』の第一人者だ。


同氏は、昨年(2011年)1月に、吹き上げた火の高さ(Highest Flame)のギネス記録(The Guinness World Records)に挑戦し、これまでのギネス記録7.2メートルを1メートル近く更新する、8.05 メートルという堂々たる記録を樹立し、 ギネス記録保持者となった。


Antonio Restivo .wmv

(Antonio Restivo氏のプロモーションビデオ。彼のトレードマークは口の周りに綺麗に生え揃った髭。一般に、火吹きパフォーマンスを披露する人は、引火を防ぐために髭を剃ることが多いですが、彼はパフォーマーとしての風貌を重視しているようです。こうしたことからも彼の『火吹き』に対する絶対的な自信がうかがえますね。)


Fire Performer Antonio Restivo | Guinness World Record Attempt | Part 5

(Antonio Restivo氏へのインタビューの様子を撮影した動画。ギネス新記録を樹立した後に撮影したもののようで、この中(1分30秒頃から)で同氏は、ギネス記録を樹立した『火吹き』を披露しています)。上方に吹き上げられる巨大な炎。圧巻です。)



動画をみると、Antonio氏のパフォーマンスは、まさに『炎の芸術』といった印象です。できることなら一度直接見てみたいものですね^_^


Antonio Restivo氏のウェブサイト

http://www.antoniorestivo.com/index/Home.html



参考サイト

火吹き(wikipedia)

Fire breathing(wikipedia)

posted by 残照 at 04:40| Comment(0) | 文化 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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