2012年06月25日

ロンドンの電話ボックスに巨大な鳩が!?電話ボックスをアートに変貌させる野外展示会「ArtBox」とは?

ロンドンの伝統の赤い電話ボックスの上に巨大な鳩。そして、その後方には英国・国会議事堂の時計台「ビックベン」。

本物ならば驚愕の光景だが、もちろんこれは本物ではない。 芸術家たちが電話ボックスを利用して製作したアート作品だ。

photo by IanVisits[CC BY-NC 2.0]

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(鳩の乗った電話ボックス(写真左)がデザイン会社HoWoCoの作品。ビッグ・ベン(写真右)は、ニュージーランド人アーティストのMandii Pope氏の作品。)

6月15日、トラファルガー広場を中心とした英ロンドン市街で、電話ボックスのアート作品の野外展示するイベントが始まった。

この野外展示会は、エリザベス女王即位60周年を記念してブリティッシュ・テレコムが企画したイベント「ArtBox(アートボックス)」の一環として行なわれたもので、画家や彫刻家、建築家、インテリアデザイナー、ファッションデザイナーなど、各分野から80人のアーティストが参加している。

展示期間は6月15日〜7月16日の約1か月間。展示作品の一部は7月18日にロンドンの「ナショナル・ポートレート・ギャラリー(National Portrate Gallery)」で行なわれるサザビーズ主催のオークションに出品される予定で、残りの作品は競売サイト「e-bay」で販売され、売り上げは創設25周年を迎えた児童保護慈善団体「ChildLine」に寄付されるという。


かつてロンドンのシンボルとして街角に点在していた赤い電話ボックスは、携帯電話の普及によって姿を消しつつある。

電話ボックスを管理するブリティッシュ・テレコム(British Telecom)は、一般からアイディアを募集するコンテストを実施するなど、不要になった電話ボックスの有効活用策を模索しており、先日も電話ボックス60台を1950ポンド(約25万4000円)で販売することを発表して話題となっている。

(参考:英国名物の赤い電話ボックス、25万円でいかがですか?(AFP))


BT ArtBox - Big Ben and more BT Boxes in progress in the warehouse - Artist: Mandii Pope

(上のビッグベンの作者のMandii Pope氏が、製作過程の作品を撮影した興味深い動画。)


photo by Ben_in_london[CC BY-SA 2.0]

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(芸術家のデービッド・マッハ(David Mach)氏の作品『T for Telephon』。彼は芸術家として作品を発表するかたわら美術学校で教鞭を取り、最近、王立芸術院(Royal Academy of Arts)の教授に就任しました。)


photo by Ben_in_london[CC BY-SA 2.0]

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(映画業界で舞台美術家としても活動する、芸術家のCosmo Sarson氏の作品『Peekaboo(いないいないばあ)』。)

photo by kenjonbro (Celebrating 60 Years 1952-2012)[CC BY-NC-SA 2.0]

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(パブリックアートを創作する芸術家集団Greyworldが製作した作品『Folwer Box』。)

photo by Ben_in_london[CC BY-SA 2.0])

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(イラストレーターのLidia de Pedro氏と経営者としても活動する異色のアーティストFee Fee La Foo氏の合作による作品『The Smile of a Tear』。サーカスをテーマにした楽しい作品です。)



■ 日本とイギリスの文化を融合させる注目のアーティストも参加!

今回の展示会には、日本とイギリスの文化を融合させた作風で注目を集めるアーティスト『坂口 大輔(Daisuke Sakaguchi)』氏も出展している。

ロンドン生まれの坂口氏は、ジュエリーやアクセサリー、衣類、家具など、様々な分野のデザイナーとして活動するかたわら、最近は自身のもう一つのルーツである日本の伝統文化を取り入れた作品の製作にも力を入れている。

今回の展示会に出展された作品『Tomodachi』も、日本伝統の浮世絵の影響を受けて制作されたもので、図案を含めて彼の独特の世界観を強く感じさせる作品となっている。

Tomadachi

(坂口 大輔氏が今回のイベントに出展した作品『Tomodachi』。「龍」、「獅子」、「鯉(錦鯉)」、「たこ」の4種類の動物が描かれています。これらは、それぞれ、「勇気」「守護者」「決意」「魔法」を象徴しており、一緒に描かれている「生命の環」と合せると、どうやら普遍的なテーマを扱った作品のように思えます。動物たちはその象徴性などから考察すると中国文化の影響がうかがえますが、色の濃淡のつけ方など、細かいタッチは日本の伝統的な技法を感じさせます。)


The 'MIRAI' Egg by Daisuke Sakaguchi

(200人以上のアーティストが参加した、今年(2012年)の『The Biggest Hunt』のチャリティーオークションに出品するために制作された坂口大輔氏の作品『MIRAI』の紹介動画。復活祭のイベントということで、巨大なダチョウの卵に描かれています。この作品は展示後にインターネット・オークションに掛けられ、4650ポンド(約58万円)で落札されたそうです。[参考:Daisuke Sakaguchi MIRAI])


photo by MnGyver [CC BY-NC-SA 2.0]

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(『Mirai』(正面)の写真。正面には大きく象が描かれています。中国では象は「力」と「聡明」の象徴とされています。)

photo by MnGyver [CC BY-NC-SA 2.0]

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『Mirai』(背面)の写真。鳳凰と風鈴が描かれ、風鈴には漢字で「未来」の文字が書かれています。)



イギリスのポップアートのように明るく鮮やかな色彩と、日本伝統の技法をうかがわせる筆遣い。 そして、中国文化の世界観を感じさせる図案。

日本とイギリス、そして中国。国境の壁を越えて各国の文化を見事に融和させた坂口大輔氏の作品は、グローバル化が進む現代の国際社会における諸問題を乗り越えるために何が必要かを、私たちに改めて気づかせてくれます。


言葉や文化の壁を軽々と乗り越え、世界中の人々を魅了する芸術家たち。

宗教や民族といった異なる価値観を持つ集団同士が対立し、政治では解決困難な問題が山積する今こそ、人々の心を自然に動かせる彼らの存在が重要になってくるような気がしますね。

この記事に関連するサイト

BT ArtBoxの公式サイト(英語)

The 27 Life(坂口 大輔氏のオフィシャルサイト)

関連記事

ロンドンの公衆電話にギュウギュウ詰め!?なぜか笑顔で観光客を押しこむツアーガイド

参考サイト

BT ArtBox public exhibition launches in support of ChildLine(NSPCC)

BT ArtBox Gallery(BT ArtBox公式サイト:英語)

象の図案(SEIKADO)

ポップアート(wikipedia)


posted by 残照 at 16:50| Comment(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月20日

ランニング中の選手が公園でゾンビの群れに襲われる!?財政危機のスペインで人気を集める新競技『ランナーズVSゾンビーズ』とは?

スペインではゾンビを避けながらゴールを目指す障害物レース『ランナーズ VS ゾンビーズ(RUNNERS VS ZOMBIES)』が、今、人気を集めている。

6月9日、その大会がスペイン・バルセロナ近郊のCollserola公園で開催され、2000人以上が参加した。

『ランナーズVSゾンビーズ』は元々アメリカで行なわれていたものをスペインに輸入したイベントで、本場のルールに手を加えてより戦略的に進化させた新競技として、昨年(2011年)から不定期で実施されている。

このレースは、5kmの障害物クロスカントリーレースに、コースを走る「ランナー」を失格させることのできる「ゾンビ」の群れを「動く障害物」として配置しているのが特徴で、これにより、ただ走るだけでなく、「ランナー対ゾンビ」という対戦形式の競技として楽しめるように工夫されている。


Runners Vs Zombies: ¿te atreves?

(Tele madridが『ランナーズVSゾンビーズ』取材した動画。ゾンビ役の参加者たちは、グロテスクなメイクと服装でゾンビになりきっています。彼らはゾンビになりきる必要があるのであまり速い動きはできないようですが、緩慢な動きから突如素早い動作でリボンを奪いに来るので、そばを通り抜けるときには油断しないことが肝心のようです。)


■ 『ランナーズVSゾンビーズ』の概要

上記の動画ではレースのだいたいの雰囲気は伝わってくるが、この競技の詳細については分からないところも多い。

そこで、この競技のルールを簡単にまとめてみた。


基本ルール(主なものを抜粋)

・ランナーは自分の命に見立てたリボンを身につけて走る(リボンは腰のベルトに付けてある)。
・ランナーはリボンをすべて奪われると失格となるので、これを守りながらゴールを目指す。
・リボンの本数は通常3本。大会によって本数は異なる。
・レースは何回かのセッションに分けて行なわれ、それぞれのセッションで最も早くゴールした人は記念品(商品)と次の大会への招待状を得ることができる。

・ゾンビはできるだけ多くのランナーの身につけているリボンを奪う。
・ゾンビは「群れ(グループ)」を作って行動し、各セッションでより多くの命(リボン)を集めた「群れ」が(その回の)勝者となる。
・ゾンビ役の参加者はゾンビの扮装をしてゾンビを演じる。
・ゾンビの「群れ」はその群れのリーダーが主導し、他の「待ち伏せエリア(ゾンビが待機する場所)」へ移動するときには通知する。

・自分の「群れ」のリーダーと25メートル以上離れてはいけない。
・身体への接触する行為は、ゾンビ、ランナーともに禁止。(タックルなどの接触プレーは禁止)
・他のランナーやゾンビのプレイを妨害するその他の行為の禁止。(怒声・罵声を浴びせたり、言葉による脅しなどの行為も禁止)
・コースを塞いではいけない。(ランナーが通り抜けるスペースを空ける)
・他プレーヤーにぶつけて怪我をさせることのできる物を持ってきてはいけない。
・コース内に食べ物や飲み物、タバコ、使い捨て製品などを持ち込まない。(会場にゴミが散乱しないようにする配慮)

(公式サイトのルールを意訳。括弧は著者の解釈。)


上記の「基本ルール」は、ランナー側、ゾンビ側の双方に対する基本的なルールから安全のための禁則事項まで多岐にわたっているが、要は、ランナーがいくつかのポイントで腰につけているリボンを奪いに来るゾンビの群れを、上手く避けながらゴールを目指す競技であることがわかる。


一方、ゾンビは自由に動けるわけでなく、行動範囲もコース内の特定の場所で、「群れ」による団体行動が基本。さらに、「群れ」はリーダーによる指揮の下で行動する必要があるなど、様々な制約が与えられている。


しかし、よく考えてみると、この制約がこの競技の重要なポイントとなっているように思える。

ゾンビを演じなければいけないという制約は元々あるが、それでもゾンビが個人で自由に動いてしまうと、集団で一人のランナーを囲んだり、障害物に隠れてこっそり待ち伏せたり、コースに密集して立ちふさがったりするなど、ゾンビ側が圧倒的に有利な状況ができやすく、戦略性よりも個々の能力差で勝敗が決まりやすくなる側面もある。


そこで、団体行動を強制し、指揮官を置いて群れの指揮を取らせることによって、ゾンビ同士の連携を促すとともに危険行為を抑制し、より戦略的な駆け引きを必要とする競技として成立させているようだ。

また、この他にもゾンビを上手く演じた人に個人賞を与えるルールもあるようで、これによりゾンビの参加者のモチベーションを高め、ゾンビ役の参加者の質の向上につなげていると考えられる。



金融・財政危機に直面するスペイン。

先日もアメリカの格付け会社ムーディーズがスペイン国債の格付けを3段階引き下げたことから、スペイン国債(10年物)の利回りが1999年のユーロ導入後の最高水準を超える7%台になりました。


このような状況下では当然、家計も「緊縮財政」にならざるを得ません。

ちなみに、『ランナーズVSゾンビーズ』の参加費は、ゾンビとして出場する場合が15ユーロ(約1500円)、ランナーとして出場する場合が25ユーロ(約2500円)と、映画の料金並のリーズナブルな価格設定になっています。

この新しいイベントが人気を集める背景には、スペイン市民の厳しい家計の事情もあるのかもしれませんね。


この記事に関連するサイト

RUNNERS vs ZOMBIES 公式サイト(スペイン語)

参考サイト

Runners Vs Zombies: do you dare?(telemadrid.es:英語)

スペイン経済危機(wikipedia)

RUNNERS VS ZOMBIES公式サイト(英語翻訳)



posted by 残照 at 17:29| Comment(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年06月16日

ブラジルで世界最大のゲイのパレードが開催!?ホモフォビアの脅威に晒されるブラジルの同性愛者の実情とは?

6月10日、ブラジル・サンパウロで、毎年恒例のLGBTの祭典「ゲイ・プライド・パレード(Gay Pride Parade)」が開かれた。

(LGBTは男性同性愛者(Gay)、女性同性愛者(Lesbian)、両性愛者(Bisexuality)、性転換者(Transgender)をまとめた呼称。)

ゲイ・プライド・パレードは、同性愛者や性的少数者の存在を社会に示すことを目的として行なわれているパレード形式のイベントで、1969年に米ニューヨークで発生した警察によるゲイバーへの立ち入り捜査に対する抗議運動の盛り上がりを受けて、翌年の1970年に初めて開催された。

そして現在では、ニューヨーク(アメリカ)、シドニー(オーストラリア)、トロント(カナダ)、ベルリン(ドイツ)、パリ(フランス)、バンコク(タイ)など、毎年6月に世界の主要都市で実施される世界的なイベントとなっている。


ブラジルのゲイ・プライド・パレードは、1997年にサンパウロのパウリスタ通りで初めて行なわれた。

1999年からは、プライド・パレード協会が組織され、本格的な運営がスタート。

その後、年々規模を拡大し、2006年には、参加者が初めて300万人に達して『世界最大のプライド・パレード(The biggest pride parade of the world)』としてギネス・ワールドレコーズに登録されるなど、名実ともに世界最大のプライド・パレードに成長している。

16回目となる今年も、300万人以上が参加。開催地には約40万人の観光客が訪れるという。


16a Parada Gay pede o fim da homofobia

(portaljovempanが今年のサンパウロの「ゲイ・プライド・パレード」を取材した動画。)

(参考動画:2011年のゲイ・プライド・パレード→ Crowds turn out to support Brazil's gay pride(AFP)、 2010年のゲイ・プライド・パレード→ Sao Paulo holds 'world's biggest' gay parade )


ちなみに、このブラジルのプライド・パレードは、観光資源として地元経済への貢献も大きいこともあり、ブラジル政府もイベントの安全な実施のために警備の面で全面的にバックアップしています。

また、近年は多くの政治家も訪れ、ときにはパレードの山車の上に乗る光景も見られるなど、LGBTの人々に対して寛容な政治家も増加しているようです。


そして、昨年(2011年)5月、ブラジル最高裁判所は、同性カップルに対し、結婚した男女と同等の法的権利(シビル・ユニオン)を認めるという画期的な判決を下しました。


これはLGBTに対する差別撤廃への大きな一歩といえますが、現実には依然としてブラジルでは多数を占めるカトリック教徒を中心にLGBTへの偏見や差別は根強く、2010年には同性愛者への嫌悪が原因とされる殺人事件が150件発生するなど、LGBTの晒されている過酷な状況はあまり変わっていません。

こうした同性愛者を過剰に嫌悪し、さらには同性愛者への暴力行為にも発展するおそれもある「ホモフォビア」と呼ばれる人々に、いかにLGBTへの理解を深めてもらうかが現在の課題になっています。


このような現状を受け、今回のパレードでは「ホモフォビア(同性愛嫌悪)は治療できる(Homophobia has cure)」がテーマとして掲げられています。

もちろん、人間にはどうしても受け入れられないことも多々あるわけですが、相手の気持ちや苦しみを理解しようと努めることくらいは誰でもできることです。

パレードでは、派手な衣装を着て笑顔で踊る参加者の姿にばかり注目しがちですが、まずはその笑顔の裏側にある彼らの苦しみを一人ひとりが想像してみることが大切だと思います。

(参考:同性婚パートナーは「家族」、法的権利認める ブラジル最高裁(AFP),ブラジル:同性愛者同士のシビル・ユニオンの承認を記念するインターネットユーザー(Global Voice),LGBTをめぐる議論(Global Voice))


この記事に関連するサイト

APOGLBT SAO PAULO

gayparadebrazil.org(サンパウロのゲイ・プライド・パレードの公式サイト)

関連記事

豪華絢爛な山車と派手なパフォーマンスで差別撤廃を訴える!?豪シドニーの同性愛者の祭典「マルディグラ・パレード」とは?

参考サイト

Pride Parade(wikipedia:英語)

ゲイ・パレード(wikipedia)

ホモフォビア(wikipedia)

LGBT(wikipedia)


posted by 残照 at 06:33| Comment(0) | イベント | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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