2012年02月21日

平成23年の児童虐待の件数が384件!?警察庁の公開資料から見えてくる母親の苦しみとは?

平成23年の1年間で、児童虐待として全国の県警で摘発された事件の件数が、前年比9.1%増の384件となり、統計を取り始めた平成11年以降で過去最多となったことが、2月16日に公開された警察庁の資料「少年非行等の概要(平成23年1〜12月)」で分かった。

一方、平成23年度児童虐待事件に絡む検挙者数は409人(前年比6.2%増)、被害児童数は398人(前年度比10.4%増)となり、こちらも過去最多となった。


平成23年「児童虐待事件の態様別検挙状況」(検挙件数)

態様 検挙件数(件) 構成比(%) 増減率(前年比)
全体 384(28)[9] 100 9.1
身体的虐待 270(28)[7] 70.3 0.0
性的虐待 96(0)[0] 25.0 43.3
怠惰または拒否(ネグレクトなど) 17(0)[2] 4.4 13.3
心理的虐待 1(0)[0] 0.3 (前年0件)

(検挙者数の()内は、子供と共に死ぬことを企図して、子供を殺害後自殺を図った事件(いわゆる無理心中)の数(外数)、[]内は、出産直後の殺人及び遺棄致死の数(外数)。)

平成23年「児童虐待事件の加害者との関係別検挙数」

関係 検挙者数(人) 構成比(%) 増減率(前年比)
全体 409 100 6.2
男性 286(7)[9] 69.9 6.7
女性 123(21)[9] 30.1 5.1
実父 134(7)[0] 32.8 22.9
養父・継父 82 20.0 -4.7
母親の内縁の夫 60 14.7 -6.4
その他の保護者(男性) 10 2.4 11.1
実母 119(20)[9] 29.1 12.3
養母・継母 1 0.2 -75.0
父親の内縁の妻 2 0.5 -33.3
その他の保護者(女性) 1 0.2 -75.0

(検挙者数の()内は、子供と共に死ぬことを企図して、子供を殺害後自殺を図った事件(いわゆる無理心中)の数(外数)、[]内は、出産直後の殺人及び遺棄致死の数(外数)。

児童虐待の加害者は圧倒的に男性が多く、女性の倍以上。その中でも実父が最も多く、全体の32.8%を占める。次いで養父・継父(20.0%)、内縁の夫(14.7%)と続く。

児童虐待で捕まった父親は「しつけのためやった」と供述することが多く、「しつけ」がエスカレートするケースが多いと考えられる。

一方、女性の加害者は9割以上が実母。その背景には子育てに悩みを抱えていても誰にも相談できず、イライラして手を上げてしまうということがあるようだ。

また、子供と無理心中を図る事例も女性のほうが多く、男性の3倍。ここでも子育てに悩み、心のバランスを崩していく母親の姿が垣間見える。)

平成23年 罪種別検挙状況(実母と実父の比較)

実母 実父
罪種 検挙件数 罪種 検挙件数
全体 119(20)[9] 全体 134(7)
殺人 24(20)[8] 殺人 6(7)[0]
傷害〈傷害致死〉 66〈7〉 傷害〈傷害致死〉 67〈6〉
暴行 4 暴行 22
暴力行為 0 暴力行為 2
逮捕監禁 2 逮捕監禁 4
保護責任者遺棄 12[1] 保護責任者遺棄 8
児童福祉法違反 4 児童福祉法違反 12
児童買春・児童ポルノ禁止法違反 4 児童買春・児童ポルノ禁止法違反 1
強姦 1 強姦 7
強制わいせつ 0 強制わいせつ 2
青少年保護育成条例違反 0 青少年保護育成条例違反 2
重過失致死傷 1 重過失致死傷 0
現住建造物等放火 0 現住建造物等放火 1
未成年者略取 1 未成年者略取 0

(()内は子供と共に死ぬことを企図して、子供を殺害後に自殺を図ったいわゆる無理心中の件数(外数)。[]内は出産後直後に殺人及び遺棄致死の数(外数)。傷害致死は傷害罪に含まれるので同じ枠内に〈〉で示した。

実母の罪で多いのが、傷害(66件)、殺人(24件)、保護責任者遺棄(12件)。これらはネグレクトによる育児放棄や育児ノイローゼで子供に手を上げてしまった結果として起こりやすい罪といえる。

一方、実父の罪で多いのは、傷害(67件)、暴行(22件)、児童福祉法違反(12件)で、殺人は6件だけ。女性に比べて「暴行罪」の多さが目立つ。

暴行罪は傷害にまで至らなかった比較的程度の軽い暴力行為を罰するものなので、「身体的な虐待」に含まれる。こうしたところからも男性のほうが殺害を目的としない「身体的な虐待」が多いことがわかる。)

(引用:少年非行等の概要(平成23年1〜12月)から一部抜粋)




今回公表されたのは、刑事事件として検挙された児童虐待に関するデータをまとめたものだが、これはほんの「氷山の一角」に過ぎないともいわれている。

では、児童相談所にはどのくらいの相談が寄せられているのだろうか。


◆ 毎年増加を続ける児童相談所の相談対応件数。昨年は前年の調査から1万件以上も増加


昨年7月公開された厚生労働省の資料によると、児童相談所が児童虐待相談として対応した件数(速報値:宮城県、福島県、仙台市を除く)は、55,152件。

児童相談所への相談件数は年々増加の一途を辿り、この年の調査は前年の調査から1万件以上増加している。


児童相談所への相談件数の推移

児童虐待による相談件数(厚生労働省).png

(厚生労働省の政策レポート「児童虐待関係の最新の法律改正について」より引用)


このように、年々児童相談所への相談件数が増加している背景には、政府や教育委員会、地方自治体が、児童虐待予防・早期発見への対策を進めたことによって教育機関や自治体からの通報が増加したことや、児童虐待への社会の関心の高まりがあるとされる。



厚生労働省は、児童虐待の社会問題化を受けて、平成12年の児童虐待防止法を制定。

それ以降、幾度もの法改正で市町村と児童相談所の権限の拡大と役割の明確化が進み、現在では児童虐待の問題には、市町村と児童相談所が協力して取り組むことになっている。

(昨年には児童虐待を行う保護者への親権停止措置を取りやすくするための民法と児童福祉法の改正案が制定されている。この法改正により、虐待を受けた本人や裁判所から選任された未成年後見人が親権停止を要請できるようになった。[参考:虐待防止へ親権2年停止可能に 民法改正案が成立(朝日新聞デジタル)])

一方、文部科学省や各都道府県の教育委員会では、教職員向けの手引きや研修資料を作成し、虐待が疑われる児童を見つけた場合の具体的な対応を周知するなど、教育現場でも、児童虐待問題への取り組みが進む。

(参考:養護教諭のための児童虐待対応の手引(文部科学省), 研修教材「児童虐待防止と学校」(文部科学省),文部科学省の「児童虐待」の資料)

しかし、相談の増加に対して、相談を担う市町村、児童相談所ともに、児童福祉司(児童虐待の相談を担う専門職)の数が追いついていない上、質の面でも心もとないという指摘もあり、相談件数の増加に対して、それを受け入れる側にも課題が多い。

(参考:― 児童相談所と市町村の体制強化が急務 ― 児童虐待対策をめぐる課題(みずほ情報総研))




家庭の教育力の低下。

長期にわたる不況による親世代の経済力の低下。

雇用環境・労働環境の悪化による親世代の精神的・肉体的な疲弊。

保護者の精神疾患。

子供の発達障害。

地域社会の希薄化による母親の孤立。


児童虐待の問題の根底には、現代の日本が解決すべき様々な社会問題があると言われ、どれも一筋縄で行かない問題ばかり。


しかしながら、児童虐待の加害者となってしまった親に対する世間の目は厳しく、「親としての能力がないのに子供を作るな!」と親の資質や能力に対して激しい批判を浴びせる人も見受けられます。

こうした批判は一部の人に対しては正論といえるのかもしれませんが、子育てに真剣に取り組む真面目な母親が児童虐待に陥る事例も多く、安易な批判が彼女たちを追い詰め、事態をさらに悪化させることにもなりかねません。


児童虐待事件が起こったときに、安易に批判的な見方をせず、どうすれば児童を救えたのかを一人ひとりが考え、周囲の人たちと話し合い、社会全体の問題として適切な支援を考えていく。

東日本大震災後、地域の絆を大切にしようという機運が高まり、地域コミュニティーの存在が見直され始めた今、行政の支援ばかりに依存せず、一人ひとりがこうした姿勢を持つことが大切なのかもしれませんね。


平成23年度全国児童相談所一覧(厚生労働省)

http://www.mhlw.go.jp/bunya/kodomo/dv30/h23.html


参考サイト

少年非行等の概要(平成23年1〜12月)(リンクは「警察庁報道発表資料」のページ)

子ども虐待による死亡事例等の検証結果(第7次報告概要)及び児童虐待相談対応件数等(警察庁報道発表資料)

児童虐待関係の最新の法律改正について(厚生労働省:政策レポート)

児童虐待の防止等に関する法律(wikipedia)

児童福祉司(wikipedia)

傷害罪(wikipedia)

暴行罪(wikipedia)




posted by 残照 at 06:11| Comment(0) | 統計 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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