2013年02月16日

海岸を歩いていた犬がお宝を発見!?札束の入った鞄に匹敵する龍涎香とは?

1月31日、犬の散歩をしていた英国人男性が、飼い犬の見つけた石によって思わぬ幸運を手にした。

この男性(ケン・ウィルマン氏)は、イングランド北西部のランカシャー州(Lancashire)モアカム(Morecambe)の海岸を散歩していたところ、彼のボクサー犬のマッジが不思議な石を発見した。

その石は黄色味を帯びた奇妙な色をしており、匂いを嗅ぐといやな臭いがしたので、そのときはそのままにして帰宅した。

自宅に帰ったウィルマン氏は、すぐさまインターネットでその石について調べ、この石がどうやら香料として珍重され、高値で取引される「龍涎香」であることを突き止めた。

ウィルマン氏は、すぐさま先程の海岸に戻ってこの石を回収し、鑑定のためにこの石のサンプルを専門家のいるフランスに送ったという。


On a Beach, Dog Sniffs Out Valuable Whale Vomit

(ケン・ウィルマン氏をメディアが取材した映像。[コピーライトマーク AssociatedPress])


一方、報道によると、既にフランスのディーラーがこの石に興味を示し、4万3000ポンド(約620万円)の買取額を提示しているという。

しかし、龍涎香に詳しい水族館の学芸員によると、「龍涎香の価値はその鮮度にもよるが、彼の拾った龍涎香は潜在的には18万ドル(約1700万円)の価値はあるだろう」と見積もっている。


ウィルマン氏は、バイク事故で背中を負傷したことが原因で現在失業中。

彼は「まるでビーチを歩いていて、50000ポンドの現金の入った鞄を見つけたようだ。もし(本物だと)確認できたら、宝くじにあたったようだよ」と語り、自分の思わぬ幸運に驚いている様子だ。


過去には、2006年にオーストラリアの海岸を散歩していたカップルが32ポンド(約14kg)の龍涎香の塊を発見し、29万5000ドルの値がついた例がある。

また、同じイギリスでは2012年9月、イギリス南西部ドーセット州の海岸で父親と散歩していた少年が、600グラム(約500万円相当)の龍涎香を拾って話題となっている。

(参考:Mirror News(英語),イギリスの少年、高価な龍涎香を発見(NATIONAL GEOGRAPHIC 日本語版))


◆ 龍涎香とは?

香料として高値で取引される龍涎香。

清朝時代の中国では龍の涎(よだれ)と言われるほど珍重されていた龍涎香は、その独特の香りが男性の性欲を高めると考えられたのか、媚薬として用いられ、後宮の美しい女性たちの必需品だったという。

当時も龍涎香は希少なものだったようで、龍涎香をポルトガル人から得るために清朝はマカオを失ったという逸話まであるほどだ。

人をそこまで惹きつける龍涎香とはどのような物質なのだろうか。詳しく調べてみた。

■ 龍涎香が海岸で発見されるのはなぜ?

龍涎香はアンバーグリス(ambergris)とも呼ばれ、マッコウクジラの腸内で生成される病的な結石と考えられている。


イカやたこを常食としているマッコウクジラは、これらを丸呑みにした際に取り込んだイカスミやくちばし部分を消化分泌液とともに胃や腸で結晶化させ、これを外に排出させる。

この結晶は、水より比重が軽いため、沈まずに海上を何年も漂いながら移動、やがて海岸に漂着する。これが龍涎香がごくまれに海岸で発見される経緯とされている。


龍涎香は、商業捕鯨が許可されていたときにはマッコウクジラの体内から取り出されていたため、一定の供給量が確保されていた。

しかし、商業捕鯨が禁止されて以降は供給量が減少し、現在では非常に希少なものとなっている。

photo by Peter Kaminski[CC BY 2.0]

Ambergris.jpg

(この写真では少しわかりにくいが、龍涎香は、黒色、灰色、琥珀色などの色が混在した大理石状の模様をした石とされる。英名のambergris「灰色の琥珀」をを意味するフランス語ambre grisが語源となっている。)

■ 自然の力で作られる芳香

排出された直後の龍涎香は、排泄物のような強い異臭を放っている。

しかし、海上を長い時間漂っているうちに、次第に異臭が取り除かれていき、漂着するころには甘い芳香を生じるようになるという。

これはまさに日光、大気、海、微生物といった「自然の力」によって作られた神秘の結晶といえる。


科学的には、日光と空気中に含まれる酸素による「酸化分解」によって、異臭を放つ物質が龍涎香特有の芳香を放つ物質に科学変化したものと分析されている。

このような研究成果は、入手困難になった龍涎香の代替品として利用できる合成香料(合成アンバー)の開発につながり、現在では多くの製品がこの合成アンバーによって賄われるようになっている。

■ 龍涎香の市場価格は?

海外で高値で取引される龍涎香だが、日本でもその独特の香りに魅力を感じる人が多いようで、日本の手作り線香の愛好家がちょっと贅沢な香料として買い求めるケースが増えている。

このため、最近では日本でも海外から輸入した龍涎香が出回るようになり、インターネットを通じて全国誰でも手軽に入手できるようになっている。


(写真は、香老舗 高野山大師堂[楽天市場店]より。これは1gなので細かく砕かれているが、もう少し思いものならば塊で入手できる。参考→ 「龍涎香」検索結果(楽天市場))


上の写真は楽天市場で購入できるものだが、日本での市場価格は1g5000円程度のようだ。

2006年にオーストラリアで発見された龍涎香(上記記事参照)が14kgで29万5000円のなので、これを基準に考えると、1gあたりの21ドル(約2000円)。どの程度の品質のものなのかは分からないが、輸入にかかるコストなどを含めると妥当な価格といえるだろう。


ちなみに、簡単に龍涎香の香りを体験するには龍涎香入りの線香を購入する方法もある。

こちらは比較的安価(20本で200円程度)で購入できるので興味のある方は購入してみてもいいかもしれない。

オリエンタルなアンバーのお香【HEM】 AMBER/アンバー香(龍涎香)スティックタイプ[楽天市場]


参考サイト

龍涎香(wikipedia)

アンバーグリス(龍涎香)(お香なんでも辞典)

香料素材(The TAKASAGO Collection)


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2012年08月11日

ニュージーランドの小学生たちが動物の死骸を使ったファッションショー!?批判を集めるこのイベントに隠された真意とは?

先月(7月)29日、ニュージーランド・ウルティ(Uruti)の小学校が動物の死体に服を着せて展示する一風変わったファッションショーを開催し、好評を博した。

ところが、この様子が地元紙のウェブサイトに掲載されると、小学校を批判するコメントがサイトに殺到し、動物愛護団体も取材に対してこの小学校を非難するコメントを寄せるなど、ちょっとした騒動に発展している。

この一風変わったファッションショーは、地元の小学校がブラインド・クロス(日除けに使う布)の購入資金を集めるために企画したピッグ・ハンティング大会の会場で行なわれた。

ショーには14歳以下の子供たちが参加し、ポッサムの死骸に思い思いの装飾を施してその美しさを競った。

(参考:Monster pigs, pimped-up possums all for a good cause(TARANAKI DAILY NEWS))



上記のAFPの記事では、動物愛護団体の言い分ばかりが強調され、イベントを主催した小学校の校長の言い分は短くまとめられているためか、一見して 小学校側に問題があるように思える。

しかし、ニュージーランドにおけるポッサムの問題について調べてみると、少々事情変わってくる。



■ ポッサムとは?

ポッサムとは、オーストラリアやニューギニア島などに生息する中〜小型の有袋類カンガルー目クスクス亜目の複数の科に属する動物の総称で、一口にポッサムと言ってもその種類は多種多様。現時点で約30種がポッサムに分類されている。

photo by KeresH[CC BY-SA 3.0]

548px-Possum_Cradle_Mountain.jpg


(ポッサムの一種「フクロギツネ」の写真。体長35-55cm。尾長25-40cm。体重はオスが1.3-4.5kg、メスが1.2-3.5kgと小型犬程度の大きさ。1日のほとんどを木の上で生活する樹上性で、生息域は市街地から森林までと幅広い。夜行性で特定の巣を作らず、昼間は木の穴などで休み、夜になると餌を求めて活動を始める。食性は雑食で木の葉や果物、昆虫、鳥やその卵など、生息域内で捕れるものはなんでも食べる。なお、同じ有袋類に「オポッサム」という動物もいるが、こちらはオポッサム目オポッサム科の動物の総称で、生物学的な特徴も全く異なる種類。こちらは外見がネズミに似ていることから「フクロネズミ」とも呼ばれている。)

■ ニュージーランドではポッサムが大繁殖している

ニュージーランドには、毛皮を取ることを目的に19世紀にヨーロッパ人によってポッサムの一種である「フクロギツネ」が持ち込まれ、野生化した。

その後、野生のフクロギツネは、天敵のいないニュージーランドで悠々と繁殖を続け、現在では在来種の存在を脅かすまでになった。

また、ウシの結核を媒介するフクロギツネは個体数が増えると家畜への感染リスクも高まるので、人間の生活への影響も小さくない。

このため、ニュージーランドのフクロギツネは、国際自然保護連合(IUCN)・種の保全委員会によって、有袋類で唯一の世界侵略的外来種ワースト100リスト(生態系や人間の活動への影響が大きい外来種を列挙したリスト)に選出され、自然環境を維持するために個体数を減らす試みが進められている。


なお、フクロギツネが駆除対象になっているのはニュージーランドのみで、フクロギツネの原産地であるオーストラリアでは、保護動物として手厚く保護されている。

(参考:世界の侵略的外来種ワースト100(wikipedia),フクロギツネ(wikipedia))

■ ニュージーランドのフクロギツネの駆除活動

ニュージーランドの豊かな自然環境を保全するために、政府も多額の予算を計上して駆除に乗り出しているが、ニュージーランドには現在7000万匹のフクロギツネが生息しているといわれており、政府の駆除活動だけでは到底追いつかないのが実情だ。

一方、フクロギツネの商品価値を見直し、駆除活動をビジネスに結びつけようという活動も民間で始まっている。

NZの嫌われ者フクロギツネが毛皮市場に(AFP公式)

(AFPがニュージーランドのフクロギツネについて取材した動画。)


ただフクロギツネを駆除するだけでなく、その毛皮を販売して収益を確保しようというこの試み。

動物から毛皮を取ることに関しては、その製造手法が残酷だということでPETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)が抗議運動を行うなど、動物愛護団体からの反発も大きい。

しかし、現実的に考えれば、フクロギツネに駆除にかかる莫大な費用を捻出するために、毛皮を販売するのが最も効率的な手段といえる。


ポッサムの駆除問題は長期的な対策が必要であり、この地域の将来を担う子供たちにとっても他人事ではありません。

特に、地方の小さな村では若者の都市への流出が激しい傾向にあり、地元に定着して地域社会を担ってくれる若者をいかに育成していくか課題となっています。

今回のイベントをニュージーランドの小学校が開催した背景には、そうした地域の事情があるように思えます。


もちろん、動物の命を人間の都合で粗末に扱うことは許されることではありませんが、『自然環境の保全』という立場に立てば、増えすぎてしまったポッサムを駆除する行為はある程度許容すべきことなのかもしれません。


日本でも、鹿などの野生生物が過剰に繁殖して食害を生じさせたり、人間が移入させた外来種が在来種を駆逐したりといった問題が各地で起こっています。

その一方で、生態系の維持のために動物を駆除することに対して意義を唱える動物愛護団体も現れるなど、「動物の保護」と「自然環境の保全」が対立することも増えています。


動物愛護団体など動物の保護を重視する人々は感情的な主張を繰り返すことも多いようですが、より広い視野を持って冷静に議論していくことが大切だと思います。


■ 用語解説

ビックハンティング……オーストラリアやニュージーランドで行なわれている伝統的な「豚狩り」のこと。

ニュージーランドの山林には、18世紀後半から探査航海でこの地を訪れるようになった船乗りたちによって放たれて野生化した豚が現在でも生息しており、この豚を標的にしたハンティングが親しまれてきた。

ピッグハンティングは、今でもスポーツハンティングとして人気を集めており、 現在20000人以上の愛好者たちが、定期的に開催される大会でその腕前を競っている。

(参考:Wild Pig Hunting in New Zealand(NZ HUNTING INFORMATION:英語)

参考サイト

日本の侵略的外来種ワースト100(wikipedia)

世界の侵略的外来種ワースト100(wikipedia)

動物愛護団体(wikipedia)

食害(wikipedia)

フクロギツネ(wikipedia)

動物の倫理的扱いを求める人々の会(wikipedia)


posted by 残照 at 01:02| Comment(0) | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年02月15日

米フロリダ州で巨大カタツムリが大量発生!?驚異的な生命力と繁殖力で生態系を破壊するアフリカマイマイとは?

カタツムリといえば、日本では梅雨の時期の風物詩として親しまれているが、真冬のこの季節、米フロリダ州南部マイアミ・デード郡では、熱帯に生息する巨大カタツムリが大発生しているという。


アフリカマイマイの原産地は東アフリカのモザンビーク、タンザニア付近のサバンナ地域。

しかし、現在では、人為的な持ち込みによって分布を広げ、東南アジア、インド洋・太平洋域の島々、西インド諸島、カリブ海沿岸地域など、熱帯地方のほとんどの地域に分布しているという。


日本では、1932年に養殖のために沖縄に持ち込まれたのが最初で、戦後、食糧難によってさらに移入が進行。現在では沖縄本島や南西諸島、鹿児島の一部の地域、小笠原諸島などに生息している。


一方、アフリカマイマイは、寄生虫(広東住血線虫)を媒介することでも知られている。

2000年には沖縄の米軍嘉手納基地に住んでいた当時7歳の米国人少女が、寄生虫(広東住血線虫)の感染が原因と見られる髄膜脳炎で死亡。

これが国内初の広東住血線虫の犠牲者で、アフリカマイマイの脅威を改めて認識させられた事件だった。

(参考:広東住血線虫で米7歳女児が死亡/国内で初(琉球新報))


アフリカマイマイ[photo by alexander r. jennerat wikipediacommons]

799px-Snail_in_Ubud,_Bali,_2010_(1).jpg

(アフリカマイマイは成貝(大人の貝)になると殻径7〜8cm、殻高が20cmに成長する世界最大級のカタツムリ。

食性は、昆虫や植物全般、動物の死骸、さらにはカルシウム摂取のために石やコンクリートまで食べる雑食性で、食欲は旺盛。

乾燥にも強く、殻を閉じた状態で半年間飲まず食わずの状態で持ちこたえるほどの強靭な生命力を持つ。

繁殖力も非常に強く、1回100〜1000個以上の産卵を約10日周期で繰り返し、急速に生息域を拡大する。

このような特徴は、野生化した場合に、生態系の破壊や農産物への被害が甚大になることを示している。

このため、アフリカマイマイは、日本国内では、植物防疫法(管轄省庁:農林水産省)に基づく有害動物指定と、外来生物法(管轄省庁:環境省)に基づく「要注意外来生物」の指定を受けており、日本の生息域からの持ち出し及び海外の生息地からの持ち込みが固く禁じられている。)


How To Care For Giant African Land Snails]】

(アフリカマイマイの飼育方法について詳しく紹介した動画。

熱帯性の生物であるため、温度や湿度の管理が重要で、温度計や湿度計の設置は必須。

また、寄生虫への感染を防ぐために、家の庭などの土を使わず殺菌済みの市販の土を利用し、触るときには自分の手をきれいに洗い、餌として与える野菜にも細心の注意を配るなど、厳重な衛生管理が必要で、飼育には大変な手間がかかるようです。

ただし、この飼育方法はペットショップなどで寄生虫に感染していない個体を入手することが前提になっています。日本で野生のアフリカマイマイを捕まえて飼育するのは危険ですのでご注意を。)




直接的には、今回のアフリカマイマイの大発生は、誰かが密輸したものが野生化したことが原因のようです。

フロリダ州マイアミ・デード郡は冬でも20度以下なることはほとんどない温暖な地域ですが、真冬のこの時期に大繁殖することに関しては、やはり温暖化の影響もあるように思えます。


経済成長を優先させ、温室効果ガス削減の枠組みに加わることに消極的なアメリカ。

今回の事件は、そんなアメリカの環境を軽視した姿勢に対する自然からの警告なのかも知れませんね。



なお、アフリカマイマイの防除や寄生虫による感染症に関する情報は以下のサイトに詳しく記載されています。


アフリカマイマイの防除(沖縄県病害虫防除技術センター)

感染症の話……広東住血線虫症(国立感染症研究所:感染症情報センター(IDSC))

最近話題になった広東住血線虫について(衛環研ニュース 第3号)(沖縄県衛生環境研究所)



関連記事

米フロリダ州で巨大カタツムリが大量発生!?当局が原因として指摘するブードゥー教の伝統的な宗教儀式とは?

参考サイト

アフリカマイマイ(wikipedia)

広東住血線虫(コトバンク)

フロリダ州(wikipedia)

About Miami-Dade County: Statistics(MIAM-DADE COUNTRY)

posted by 残照 at 16:44| Comment(0) | 動物 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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