2013年05月10日

やっぱり幸福はお金で買えるの!?現代の2人の経済学者が異議を唱える「イースタリンの逆説」とは?

「人生お金が全てじゃないよ。」

「家族が健康で食べていくに困らないだけのお金があれば十分さ」

ゴージャスな生活を送るセレブリティをテレビなどで目にすると、私たちはなんとなくそんな強がりを言ってしまう。「羨ましい」という思いを内心に隠しながら。


とはいえ、お金持ちであっても幸せそうに見えない人もいるし、それほど裕福でなくても笑顔の絶えない家庭もあるのも事実だろう。

こうした実態は研究材料にもなっており、1974年には経済学者のリチャード・イースタリン氏によって一つの学説が発表されている。


彼の学説は「イースタリンの逆説(Easterlin Paradox)」と呼ばれ、wikipediaによると以下のように定義されている。

「貧しい人は、お金により幸福感が増す。しかし、中流に達すると、それ以上お金が増えても、幸福感はあまり変わらない。ある研究によれば、年収が7万5千ドルを超えると、お金が増えても幸福感はほとんど増えない。」

(wikipedia「ポジティブ心理学」より引用)

ところが、先日この学説が誤りだとの見解を示す論文が発表され、物議を醸しているという。

「幸せはお金で買え、しかもお金が多いほど多くの幸せが手に入る」

こう結論付ける論文を発表したのは、米ミシガン大学の2人の経済学者。

彼らの研究によると、国が豊かになると所得から得られる満足度は低下していくが、(イースタリンの逆説で挙げられているような)幸福度の上昇がほとんどなくなる「飽和点(当時の米国基準では年収7万5000ドル)」を示す証拠はなく、「一国の中では、平均幸福度と平均所得との間に明らかに相関関係が見られた」と主張。「イースタリンの逆説」を否定している。


イースタリン氏は、日本でも調査を行っていたようで、当時の日本にも自身の学説が当てはまると考えていたようです。

とはいえ、イースタリン氏の学説は、今から約40年前に発表されたもの。

当時は日米両国ともに経済成長率が高く雇用も安定していたので、一定の収入が得られれば将来に不安を感じずに生きることができました。


しかし、それから40年を経た現在では日米ともに当時と比べて失業率が大幅に上昇し、所得格差も拡大。日本では当たり前だった終身雇用制は崩壊し、非正規雇用で不安定な立場に置かれる若者も増加しています。

さらには、少子高齢化の進展によって老後の頼みの綱だった年金制度も破綻に向かっているのは誰の目にも明らかです。

こうした時代に生きる人々にとっては、より高い収入を得てより多くの貯蓄をすることが将来の安心感につながるので、収入と幸福感の相関関係が強まるのは当然と言えるでしょう。


今回の2人の経済学者の主張は、一見して従来の説に対立しているようにも見えますが、ただ単に経済環境が劇的に変化した現代に、約40年前の学説をそのまま適用できなくなっているだけだと思います。

学者の中には世間を混乱させることが得意な人も多いようですが、無為な論戦を繰り返すよりも、多くの人々に幸福感を与えられるような処方箋を提示して欲しいものですね。

参考サイト

一億総中流(wikipedia)

誰をも不幸にする豊かさ(生活経済政策研究所)

ポジティブ心理学(wikipedia)

ポジティブ心理学とは?


世界でひとつだけの幸せ―ポジティブ心理学が教えてくれる満ち足りた人生

posted by 残照 at 15:35| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年04月12日

5年後の売り上げは1500億食を超える!?「即席めんの世界総需要」から見えてくる即席めん市場の現状は?

1958年、日清食品の創業者、安藤百福氏が「チキンラーメン」世に産み出して以来50年。インスタントラーメンは日本の国民食の一つとして親しまれてきた。

そして、現在では、その調理時間の短さや味のバリエーションの豊富さを背景に、これまで麺類を食べる習慣のあったアジアだけでなく、その調理時間の短さや味のバリエーションの豊富さを背景に、温かいラーメンを食べる習慣のなかった欧米の一部の国々でも売り上げを伸ばし、世界中の人々に愛されるようになっているという。


米市場調査会社グローバル・インダストリー・アナリスツ(Global Industry Analysits)が4月2日に発表した調査によると、5年後のインスタントラーメンの売り上げは、1540億食を超えると予測されている。


しかし、一般的なインスタントラーメンには多くの油と塩、化学調味料が多く含まれており、健康を気遣う人にとって食べにくい食品であることは否めない。

そんな中、少しでも健康的にインスタントラーメンを食べる方法を発信するWEBサイトが人気を集めているという。


ちなみに、2011年5月に世界ラーメン協会が発表した2010年の「即席ラーメンの総需要」は約954億食。

つまり、上記の記事の予測は現在から5年で500億食以上増加するという計算になる。

この根拠はどこにあるのだろうか。


◆ 「即席めんの世界総需要」から見えてくる各国の即席めん市場の現状


■ 2010年の「即席めんの世界総需要」

「世界ラーメン協会」は、毎年、世界で消費された即席めんの量を示すデータとして「即席めんの世界総需要」を公表している。

このデータは、毎年5月頃に発表されるので、現時点での最新データは2010年のものだが、それでも世界の即席めん市場の現状について多くの情報を提供してくれる。


即席ラーメンの総需要

順位 国名 需要(単位:億食)
1 中国・香港 423.0
2 インドネシア 144.0
3 日本 52.9
4 ベトナム 48.2
5 アメリカ 39.6
6 韓国 34.1
7 インド 29.4
8 タイ 27.1
9 フィリピン 27.0
10 ブラジル 20.0
11 ロシア 19.0
12 ナイジェリア 16.7
13 マレーシア 12.2
14 メキシコ 8.3
15 台湾 7.8
16 サウジアラビア、アラブ首長国連邦等 7.6
17 ネパール 7.3
18 ウクライナ 5.4
19 カンボジア 3.3
20 ポーランド、ハンガリー、チェコ 3.1
21 イギリス 2.6
22 ミャンマー 2.4
23 カナダ 2.1
24 ドイツ 1.8
25 オーストラリア 1.6
26 シンガポール 1.2
27 フィジー、周辺諸島 0.9
28 南アフリカ 0.9
29 バングラデシュ 0.6
30 ニュージーランド 0.4
31 フランス 0.4
32 ノルウェー、フィンランド、スウェーデン、デンマーク 0.3
33 コスタリカ 0.2
34 オランダ 0.2
35 ペルー 0.2
36 ベルギー 0.1
37 その他 2.0
総需要(合計) 953.9

(引用:即席ラーメンの総需要(世界ラーメン協会:WINA))


やはり、人口13億人の巨大市場を抱える中国が全体の40%を超える約423億食でトップ。

2位はインドネシア(約133億食)で、そしてようやく3位に日本(約53億食)。以下、ベトナム、アメリカ、韓国と続くが、上位には華僑たちも多く住み、麺料理が深く浸透するアジア圏の国々が多い。

一方、欧州で売り上げが伸びているといわれているが、このデータを見る限りではまだまだ市場は小さいことがわかる。


■ 2002〜2010年の「即席めんの世界総需要」の推移


世界の即席めん市場の推移を分かりやすくするために、2002〜2010の「即席めんの世界総需要」の推移をグラフにまとめてみた。


即席ラーメンの世界総需要の推移.png

(社会データ実情図録に基づいて作成。画像クリックで拡大できます。さらに拡大したい場合はリンク先の画像をクリックしてください。)

即席めんの世界需要・各国の需要の推移(122位以下はその他に含まれる)

順位 国名 2002 2003 2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010
1 中国・香港 231.0 320.0 390.0 442.6 467.9 458.1 425.3 408.6 423.0
2 インドネシア 109.0 112.0 120.1 124.0 140.9 149.9 137.0 139.3 144.0
3 日本 52.7 54.0 55.4 54.3 54.4 54.6 51.0 53.4 52.9
4 ベトナム 17.0 23.0 24.8 26.0 34.0 39.1 40.7 43.0 48.2
5 米国 33.0 37.8 38.0 39.0 40.4 39.0 39.5 40.8 39.6
6 韓国 36.5 36.0 36.5 34.0 33.7 32.2 33.4 34.8 34.1
7 インド 2.3 3.0 4.3 5.8 8.0 12.3 14.8 22.8 29.4
8 タイ 17.0 17.2 17.8 19.2 20.5 22.2 21.7 23.5 27.1
9 フィリピン 20.0 22.0 25.0 24.8 25.0 24.8 25.0 25.5 27.0
10 ブラジル 11.9 11.1 11.5 12.6 13.8 15.0 16.9 18.7 20.0
11 ロシア 15.0 15.0 15.2 16.0 18.0 27.1 24.0 21.4 19.0
12 その他 40.3 47.1 61.2 61.7 64.2 72.9 83.8 86.3 89.6
世界総需要(合計) 587.0 698.2 799.8 860.0 920.8 947.2 913.1 918.0 953.9

(参考データ:社会データ実情図録)


2002年から2010年までの9年で世界需要はほぼ倍増しているが、近年は2007年をピークに一時減少に転じるなど、即席ラーメンの世界需要は順調に伸びているとは言いがたい。


巨大市場を背景に世界の即席めん需要を牽引するものの、近年は需要が落ち込み気味の中国。

依然として高い需要を維持するも国内市場の頭打ちを感じさせる、日本、米国、韓国。

その一方で、インドやブラジル、タイ、ベトナム、インドネシアといった新興国の需要は急速に伸び、今後のさらなる市場の拡大を感じさせる。


「即席ラーメン総需要」の年次の推移を見ると、こんな即席ラーメンの市場の現状が見えてくる。

つまり、上の米市場調査会社の予測は、即席ラーメン市場が新興国を中心にさらに拡大していくことを念頭に置いたものと考えられる。




日本の即席めんメーカーは、縮小傾向の国内市場に見切りをつけ、海外市場への進出を活発化させています。

たとえば、日本の業界トップの日清食品は、海外市場を米州、中国、アジア、欧州の4地域に分けてそれぞれの地域を統括する総代表を置き、海外事業を迅速に行うための体制を整えています。

さらに、日清食品はシンガポールにアジア戦略本部を設置するなど、成長著しいアジア地域を重視する姿勢を鮮明にしています。


一方、日本市場で日清食品を追随する東洋水産(マルちゃん)、サンヨー食品、エースコックもそれぞれ独自の海外展開を進めています。


日本の主要メーカーの海外展開

メーカー名 代表的な製品 事業内容
日清食品 カップヌードル 1970年、創業者の安藤百福氏が、「キャンベル製品(アメリカの大手食品会社の製品)隣にラーメンを陳列する」と決意して、アメリカに進出したのが海外展開の始まり。中国市場へは1985年に香港(当時英国領)に進出したのが始まりで、現在では香港の地域シェア60%を日清食品の製品占めるようになっている。さらに、2011年には、中国全土を視野に入れて上海に投資会社を設立。香港、上海を軸に、中国全土への事業展開を図っている。また、1991年にはインドに進出。それ以降、インドネシア、タイ、フィリピン、シンガポールなど東南アジア諸国に次々と進出し、アジア地域への事業展開も活発に進めている。
東洋水産(マルちゃん) マルちゃん正麺、赤いきつね、緑のたぬき 1972年に米カリフォルニア州に「MARUCHAN INC.」を設立し、北米、メキシコに向けての製造・販売を開始。特に、メキシコでは「Maruchan」の即席麺の人気が高く、2004年には8割近くのシェアを獲得。現在、メキシコではマルちゃんの即席ラーメンが「国民食」として親しまれ、「Maruchan」が「簡単にできる」「すぐできる」という意味の言葉として使われるほど、国民の生活に定着しているという。
サンヨー食品 サッポロ一番、Cup star 1978年に「米国サンヨーフーズ」を設立して海外展開を開始。近年は海外メーカーとの提携を積極的に行い、海外事業を強化している。1999年には中国市場で50%のシェア(金額ベース)を持つ「康師傅(カンシーフ)」と資本提携。2011年にはロシア第三位の即席麺メーカーの「キングライオンズグループ」の持ち株会社に資本参加し、業務・資本提携を締結している。
エースコック スーパーカップ、わかめラーメン 1993年12月にベトナムに現地法人「エースコックベトナム」を設立し、即席麺の海外事業を開始。高品質で安価な「ハオハオ(Hao Hao)」という袋ラーメンを販売して大ヒット。年間26億食を超える販売実績を持つシェア第一位の企業となった。人口約8600万人に過ぎないベトナムで、即席めん市場を年間消費量約40億食の大市場へと成長させたのは、エースコックの技術や製作ノウハウの提供があったからとされる。


世界で拡大を続ける即席めん市場。

日本で生まれた即席めんは今や世界中に広がり、「日本の国民食」が「世界の国民食」になりつつあります。

これは日本人としては嬉しい限りですが、その一方で、世界を舞台にした熾烈な市場シェア争いは激しさを増し、日本メーカーは海外で厳しい競争に晒されるようになりました。

世界一の市場を誇る中国市場では、中国人の好みを熟知した台湾メーカー「康師傅(カンシーフ)」がシェア50%を誇り、日本企業はまだその牙城を崩せない状態が続いています。今後の日本企業の巻き返しに期待したいですね。



「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力



参考サイト

インスタントラーメン(wikipedia)




posted by 残照 at 23:35| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月22日

著名人も標的になる「炎上マーケティング」!?その実例から見えてくるその危険性と可能性とは?

インターネット上で誰でも閲覧可能なブログやSNSなどで、予期せず、抗議や中傷、非難などネガティブなコメントが大量に寄せられる現象は「炎上」と呼ばれている。

特に企業の場合は、コメントだけでなく、メールや電話での抗議、さらには2ちゃんねるの掲示板でその企業の不買運動が呼びかけられることもあり、場合によっては企業の活動に甚大な被害をもたらすこともある。


一方、最近はブログやTwitterで犯罪告白をする若者が増え、非難や中傷のコメントが殺到してアカウント削除に追い込まれる「炎上」が、大小含めて頻繁に見られるようになった。


こうした個人や企業の軽はずみな言動に対して集中放火を浴びせる風潮が広まりつつある現代において、これを逆に利用し自分の利益に結びつけようという「炎上マーケティング」が近年流行しているという。


たとえば、最近では人気漫画家がTwitterでこの「炎上マーケティング」に巻き込まれている。

(参考:サイト「炎上」のワナで高収入を得る!? 「ハヤテのごとく!」作者がハマった手法(J-castニュース))



マーケティング関連の記事が豊富に掲載されているウェブサイト「Marketingis」さんの「用語解説wiki」によると、「炎上マーケティング」は以下のように解説されている。

炎上マーケティングとは、ブログやSNSなどソーシャルメディアでの「炎上」を利用したマーケティング。作為的、意図的に炎上させることで注目を集め、そのトラフィックを自らの宣伝に使うことを目的とする行為。バッシングマーケティングとも呼ばれる。

(引用:炎上マーケティング(Marketingis.jp))


上記の説明でなんとなくは理解できるが、その実態はわからない。

そこで、今回は「炎上マーケティング」の実例をいくつか挙げて、その実態に迫ってみようと思う。


◆ 2つの実例から迫る「炎上マーケティング」の成功の条件とは?


■ まんべくん騒動


騒動の経緯

北海道山越郡長万部町のイメージキャラクターとして2003年に誕生した「まんべくん」。

当初はどこにでもいるような「ゆるキャラ」に過ぎず、目立つ存在ではなかった。

まんべくん

348px-Manbe.jpg

[photo by Kandaijyoubu at wikipedia ]


まんべくんのプロフィール
愛称:まんべくん
姓名:おしゃ まんべ
生年月日:2003年(平成15年)7月31日 午後3時
住所:北海道山越郡長万部町字長万部
身長:1m50cm - 1m90cm(その時によって、背が伸び縮みする)
性別:男
趣味:エコ活動、お散歩、温泉(42℃以上)
特技:コマネチ、バルタ○星人のものまね
好きな食べ物:ラーメン
嫌いなもの:二酸化炭素
苦手なもの:犬
性格:目立ちたがり屋、ドジでおっちょこちょい、温厚でやさしくの〜んびりしているが、ものすごく怒った時は、カニばさみで攻撃することもある。しかし、まだ誰も怒ったところを見たことはない
将来の夢:NHK教育番組に出演すること、ポ○キッキーズに出演すること、マクド○ルドのハッピーセットになること、おしゃまんべ町が大好きなので、たくさんの人でまちがにぎわうこと

(wikipedia「まんべくん」より引用)

ところが、2010年に地元の出身のウェブ制作会社を経営する男性が「まんべくん」のプロモーションを請け負ってから、癒し系のご当地キャラクターだった「まんべくん」が、次第に「毒舌キャラ」へと変貌していく。


騒動までのまんべくんの活動

・2010年10月、「まんべくん」の運営会社のエム(株)が、Twitterに「まんべくん」の公式アカウントを開設。(参考[1],[4])
・Twitter開始当初は、「毒舌」を売りにしたキャラクターではなく、フォロワーからの質問にテンポ良く返すフレンドリーな「ゆるキャラ」としてフォロワーに人気だった。当時の1日のツイート数は約250件、こうした極め細やか対応も人気を集める要因となった。(参考[4])
・2011年11月10日の北海道新聞夕刊に、「長万部町のゆるキャラの『まんべくん』のおもしろい『つぶやき』が好評」という内容の記事が掲載され、話題を集める。(参考[3])
・2010年末頃から、まんべくんが実際に全国各地に出張し、ファンと交流する「まんべ会」が全国各地で開かれるようになる。(参考[3])
・2010年12月30日の函館新聞で、まんべくんが、「年賀状をください」と呼びかけると、2011年には305通もの年賀状が届くほどの人気者となった。(参考[3])
・2011年にはさらにイベントへの出演が増え、2月は北海道札幌市の「札幌プリンスホテル」の「『まんべくんのご紹介で…』宿泊プラン」が企画されるなど、地元の経済にも貢献するようになった。(参考:ITMediaの記事)
・若者を中心とした熱狂的ファンに支持され半年で1300ものフォロワーを獲得。(参考[2])
・2011年春以降は、地元のテレビやラジオへの出演も増え、5月には念願のNHK出演も果たす。(参考[3])
・ところが、5月下旬以降、「まんべくん」のTwitterには、芸能人や身体障害者、天皇陛下などをネタにした過激な内容の「つぶやき」が次第に増えていく。こうした「つぶやき」には非難が殺到し、そのたびに「プチ炎上」となるが、すぐに「まんべくん」は「すまんべ(え)」と謝罪する。そのたびにネットニュースや2ちゃんねるで話題となり、結果的にフォロワーの増加につながった。(参考[4],まんべくんの問題発言の一部をまとめたサイト(Neverまとめ))

こうした「過激な発言」→ 「プチ炎上」→ 「すまんべえ(謝罪))」→ 「ネットニュース(2ちゃんねる)で話題に」→ 「フォロワーが増える」という、いわば「まんべくん式の炎上マーケティング」の手法は、以後定番となり、「まんべくん」の運営会社の社長はすっかりこの手法に味をしめ、まんべくんのつぶやきは次第に人を貶めることも厭わない過激なものが増えていった。

度重なるまんべくんのTwitterの問題発言は町側も懸念を抱き、「政治や宗教などについてはやめておくように」と、この運営会社を指導していたが、結局聞き入れられず、終戦記念日の前日の8月14日から当日15日にかけて行なわれた太平洋戦争に関する一連のつぶやきが起こってしまった。

(参考:まんべくんの戦争発言のまとめ(Togetter))


まんべくんの太平洋戦争についての「つぶやき」は、当時の複雑な国際情勢なども顧みず、(おそらく運営会社社長の偏った見解に基づく)一方的に「戦争は日本の責任だ」と決め付けるような論調で述べられているが、フォロワーを煽るために意図的に挑発的な言葉を使っている印象を受ける。

まんべくんの戦争に関する一連の発言は多くの反響を呼んだが、その後、「炎上」を収束するために行ったまんべくんのつぶやきでさらには事態は悪化。過去の問題発言と合わせて激しい非難の声に晒されることになった。

さらには、問題のある運営会社を放置し続けた長万部町役場にも批判の矛先が向かい、まんべくんの発言について説明を求める抗議や苦情の電話やメールが殺到。役場のホームページは一時的にアクセスしにくい状態となった。

こうした事態を受けて、翌16日、長万部町は「まんべくん」の一連の発言について謝罪。運営会社の「まんべくん」の使用許諾権を剥奪し、Twitterの使用も停止させることを発表した。

この騒動によりTwitter以外の「まんべくん」の活動も休止に追い込まれ、予定していたイベントへの出演もキャンセルするなど、様々な方面に影響がでた。

(参考:[1]まんべくん騒動まとめwiki,[2]まんべくん騒動に見る「炎上マーケティング」の教訓(日経新聞web),[3]まんべくん(wikipedia)[4]ゆるキャラ「まんべくん」哀れな末路(日経ビジネスオンライン))


まんべくん騒動のその後

今年1月上旬、騒動の発端となったまんべくんのTwitterが強引に再開されている。

再開されたTwitterのアカウントは@manbe_kunGTに変更されていたが、名前は「まんべくん」。アイコンにもまんべくんの画像を使われている。

元のWEB関連会社が再開したという説もあるが、運営しているのは地元の有志たちであるという説もあり、真相はわからないが、「まんべくん」の商標権を持つ長万部町はこれを公式には認めていないと発表した。

このため、Twitterでの名前は「一ノ瀬☆まんべ(@manbe_kunGT)」改名することになったが、現在でもこのアカウントは9万人以上のフォロワーと交流を続けている。

これに対して1月29日、町は近く公式Twitterを含む「まんべくん」を地元の団体に委託する方針を表明。

これにより、Twitterの書き込み担当者も変わる見込みで、この騒動は一応の収束を迎えることとなったが、まだ紆余曲折がありそうだ。


(参考:まんべくん、優等生に? ツイッター委託に懸念の声(MSN産経ニュース),「まんべくんツイッター」無断で再開 長万部町「許可していない」(J-castニュース))


「まんべくん騒動」は、「炎上」によってフォロワーを増やすという手法に味をしめ、歯止めのきかなくなった運営会社社長の驕りが原因といえる。

しかし、その背景には、町の顔となる「ゆるキャラ」のマーケティングを外部の業者に丸投げし、運営会社の暴走に対して断固とした措置を講じてこなかった長万部町役場の不作為がある。

本来協力関係にあるべき委託元の町役場や町の観光協会を「能力のない、年季の入っている人たち」と決めつけ、忠告も聞かずに自分の道をひたすら突き進んだ運営会社の社長。

「炎上マーケティング」によって急速にフォロワーを増やした一方で、それまでまんべくんを支持していたファンは、その変貌ぶりに違和感を感じて離れていったという指摘もある。

「毒舌キャラ」や「炎上」をおもしろがってフォローした人は、興味本位でとりあえずフォローしてみたという人がほとんどで、長万部町への関心は薄い層。この層に「いかにして長万部町に関心を持ってもらい、観光客増加に結びつけるか」という本来取り組むべき課題を見失っていたのかもしれない。

果たして彼は、「炎上マーケティング」の先に、どんな展望を抱いていたのだろうか。


■ カンヌ国際広告祭でグランプリを受賞したルーマニアのお菓子会社のプロモーション


一方、「炎上マーケティング」を上手く利用して、商品の売り上げを大幅に伸ばした事例もある。


2011年のカンヌ国際広告祭(Cannes Lions International Advertising Festival)で、プロモ&アクティベーション部門とダイレクト部門の2部門でグランプリ(金賞)を受賞したルーマニアのお菓子メーカーが行ったプロモーションは、国民のナショナリズムを上手く利用したとして絶賛された。


このお菓子メーカーの看板商品であるチョコレートバー「ROM」は、同国の国旗をパッケージに採用し、1989年のルーマニア建国以来、長年に渡って国民に愛されてきた。

しかし、近年はアメリカのブランドのほうがカッコイイという若者が増え、チョコレートバーもアメリカのSnickersが売り上げを伸ばす一方で、「ROM」の売り上げは落ち込んでいたという。


こうした現状を打破するためにこのメーカーがとったのが、国民のナショナリズムを喚起し、国内メーカーの製造する「ROM」に再び注目してもらおうというプロモーション戦略だった。


カンヌ2部門受賞の超ハイレベルな“炎上マーケティング”(ブログタイムズBLOG)


KANDIA DULCE: The American Rom - Cannes Lions 2011

(このお菓子メーカーが行ったプロモーションを紹介した動画。)


プロモーションの内容は上記のサイトと動画に詳しく知ることができるが、ざっとまとめると以下のようになる。

プロモーションの概要
・お菓子メーカーは、プロモーションの第一段階として、伝統的なパッケージをルーマニア国旗からアメリカ国旗に変更し、それをTVコマーシャルや店頭キャンペーン、WEBサイトなどの各種メディアで大々的に告知した。
・この行為は、愛国的な思想を持つ人々にとっては「裏切り行為」以外の何者でもなく、誰でも手軽に意見を交換することのできるインターネットを中心に論議を呼び、フェイスブックにはアメリカ国旗の「ROM」の追放運動まで起こるほどの盛り上がりを見せた。
・過熱したインターネット上での論争は他のメディアにも波及し、プライムタイムのニュース番組でもこの話題いが取り上げられるなど、「ROM」のパッケージ変更の話題はより多くの人々に知られることとなった。
・そして、騒動が最高潮に達したとき、第2段階目のプロモーションとして、一夜にしてパッケージデザインを元のルーマニア国旗に戻し、これをTVコマーシャルや店頭キャンペーン、WEBサイトなど各種メディアで再度告知した。
・CMでは、「ルーマニア人の愛国心の再発見を(国民)みんなで喜びましょうよ」と市民たちに呼びかけ、今回の「壮大なジョーク」の意義を説明した。
・このプロモーションにおけるフリーパブリシティ(商品に関する記者発表をマスメディアに報道してもらうことによって無料で広告・宣伝効果を得る手法)の宣伝効果は広告に換算して300,000ユーロ。これにより大きく売り上げを伸ばし、チョコレート菓子の市場で20%のシェアを獲得し、ライバルのSnickersを抜いて同国のチョコレート菓子市場でマーケットリーダー(市場シェア一位の企業)の地位を取り戻した。


このプロモーションのすごいところは、「炎上」をマーケティングに利用するために、人々の反応を予測して周到な準備をし、それを速やかに実行したことにある。

突然、店の商品を入れ替えて、その事実を大々的にアピール。

投下したネタでネットユーザやマスコミが十分に盛り上がったら、すかさず店の商品を元に戻し、「ネタばらし」。

そして、自分たちが起こした騒動の意義を声高らかに宣言する。

(愛国心ヽ(´ー`)ノバンザーイ)


あまりの手際の良さに、この話題に踊らされた人たちは、笑うしかないだろう。

今まで猛然と抗議する姿勢を見せていた人々は憤慨するかもしれないが、むしろ、「みんなで一つの話題で大いに盛り上がれて楽しかった」と思っている人のほうが多いに違いない。



今回、2つの事例に触れてみて分かったのは、「炎上マーケティング」は、使い方次第では、企業の信用を落とすことも、少ない費用で企業の業績を大幅に伸ばすこともできる「諸刃の剣」だということです。

しかし、「まんべくん騒動」が教えてくれるように、「炎上」をどのように利用するかという明確な展望を持たなければただ世間を騒がせるだけに終わってしまいます。


「炎上マーケティング」を成功させるには、「炎上」によるリスクを減らすために、まずプロモーションしたい商品に合わせたネタを選定して、ネタの投下によって起こりうる反響を的確に予測し、苦情や抗議への適切な対応を行える体制を構築する。

そして、ネタの投下してからどのように騒動を収束させるかといったことを綿密に計画し、周到な準備して臨むことが重要のようです。


一方、上記の漫画家の例のように、著名人のTwitterを利用して「炎上マーケティング」を仕掛ける行為は、「タダ乗り炎上マーケティング」と呼ばれ、自分で何も考えずにただ一時的なアクセスを稼ぐために、他人の力を利用するだけの迷惑行為で、厳密には「マーケティング」とはいえません。


こちらは、「炎上マーケティング」を仕掛ける相手の誘いに安易に乗らないことが大切です。

こういう問題は人の感情が関わることなので、なかなか難しい面もありますが、やはり一人ひとりが冷静になるしかありませんね。


炎上に関する有用なサイト

ネットで「炎上」している友人・知人を気づかう方法(nanapi)

ブログを書く時の注意点・炎上した時の対処法(nanapi)

ソーシャルメディア炎上事件簿(日経ビジネスオンライン)



参考サイト

炎上(wikipedia)

長万部市(wikipedia)

まんべくん(wikipedia)

カンヌ国際広告映画祭(wikipedia)

パブリシティ(マーケティングwiki)

マーケットリーダー(BuzzWord)

posted by 残照 at 01:30| Comment(0) | 経済 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
×

この広告は1年以上新しい記事の投稿がないブログに表示されております。