2012年05月09日

ムンクの「叫び」が競売での販売額のギネス記録を更新!?現在の競売落札額のトップ10は?

2日に米ニューヨークの競売大手サザビーズで競売にかけられた、ノルウェーの画家エドヴァルド・ムンクの代表作「叫び」が、美術品としては史上最高額の1億1990万ドル(約96億円)で落札された。

今回競売にかけられたのは、4種ある「叫び」のうち、パステル画で描かれた作品。

父親がムンクの知人で資金提供者だったというノルウェーの実業家ペッター・オルセン氏が所有していたものが出品され、落札額は8000ドルを超えると予想されていた。

競売では7人が白熱した入札合戦を繰り広げ、最終的にこれまで絵画の最高落札額だったピカソの「ヌード、観葉植物と胸像」の1億650万ドルを1千万ドル以上上回る過去最高額での落札となった。


一方、ギネス・ワールドレコーズ社は、公式サイトでこの落札額を「最も高額な競売で販売された絵画」の世界記録として認定することを発表している。

(参考:EDVARD MUNCH'S THE SCREAM FETCHES WORLD RECORD PRICE AT AUCTION(ギネス・ワールドレコーズ公式サイト:英語))


競売落札額ランキング(私的売買を経ての競売出品を除く)

順位 作品名 作者 制作年 競売日 落札額[単位:百万ドル]
1 叫び エドヴァルド・ムンク 1895 2012.5.2 119.9(119.9)
2 ヌード、観葉植物と胸像 パブロ・ピカソ 1932 2010.5.4 106.5(112.0)
3 パイプを持つ少年 パブロ・ピカソ 1905 2004.5.4 104.2(126.4)
4 ドラ・マールの肖像 パブロ・ピカソ 1941 2006.5.3 95.2(107.9)
5 アデーレ・ブロッホバウアーの肖像II グスタフ・クリムト 1912 2006.11.2 87.9(100.1)
6 トリプティク フランシス・ベーコン 1976 2008.5.14 86.3(91.4)
7 医師ガシェの肖像 ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ 1890 1990.5.15 82.5(146.5)
8 睡蓮 クロード・モネ 1919 2008.6.24 80.5(84.5)
9 ムーラン・ド・ラ・ギャレットの舞踏場 ピエール・オーギュスト・ルノアール 1876 1990.5.17 78.1(138.7)
10 幼児虐殺 ピーテル・パウル・ルーベンス 1611 2002.7.10 76.7(97.7)

(※ 表のデータは2012年5月9日現在のもの。落札額の()は、物価の変動を考慮し、現在の貨幣価値の換算した調整落札価格。このため、現在の貨幣価値に換算すると、この中では1990年に落札された「医師ガシェの肖像(ヴィンセント・ヴァン・ゴッホ作)」が、競売で落札された最高額の絵画となる。なお、出品された競売場は1、3、4、6、9位がサザビーズ(ニューヨーク)。2、5、7位がクリスティーズ(ニューヨーク)、8位と10位がそれぞれクリスティーズ(ロンドン)とサザビーズ(ロンドン)。ユーロで取引されたものは、当時のレートで米ドルに換算している。)

(参考:List of most expensive paintings,【ランキング】世界で最も高額な絵画ベスト20(Naverまとめ))


ちなみに、競売を介さずに売買されたものを含めると、「最も高価な絵画」は、19世紀末から20世紀にかけて活躍したフランスの画家ポール・セザンヌが1985年に描いた連作絵画「カード遊びをする人々」の中の1点だそうです。

この絵画の取引は2011年行なわれ、購入したのはカタール王室。その額は2億5000万ドル以上といわれています。

(参考:セザンヌ「カード遊びをする人たち」 世界で最も高価な絵画に)


カタールは石油や天然ガスなど天然資源が豊富で、国民一人当たりのGDPも世界最高水準。

しかし、極度に天然資源に依存した中東諸国の経済は、資源の枯渇とともに衰退に向かうのは確実で、競争力強化のための若者の教育の充実や産業の育成が課題となっています。


現在のカタール王室の首長(カタール王室の当主)のハマド氏は、天然資源のみに依存した旧来の体制を変えるため、1995年に父の前首長を無血クーデターで追放して自らが首長になると、国内産業の育成のために数々の改革を行い、首都ドーハの観光地化を推進した気骨ある人物。

中東で最も影響力があるとされる放送局「アルジャジーラ」も彼のポケットマネーによって設立されました。


ちなみに、このアルジャジーラの設立資金として王室から拠出されたポケットマネーは1億5000万米ドルだそうです。

放送局よりも高額な絵画を何のためらいもなく購入できるカタール王室の財力と権威の強さには驚嘆させられますね。


ポスター ポール セザンヌ The Card Players


参考サイト

ムンクの「叫び」競売、5月にニューヨークで 60億円超える可能性(AFP NEWS)

ポール・セザンヌ(wikipedia)

カタール(wikipedia)

ハマド・ビン・アル=サーニー(wikipedia)


posted by 残照 at 18:17| Comment(0) | 芸術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月26日

古いゲーム機で音楽を作る!?ゲーム音楽から生まれた「チップチューン」とは?

現在、米ワシントンD.Cのアメリカスミソニアン博物館で開催中の家庭用ゲームの展示会「The Art of Video Game」。

この展示会のプロモーション動画がYoutubeで公開されている。


The Art of Video Games: Exhibition Trailer


上の動画では主催者たちが今回の展示会について熱く語っているが、注目すべきはこの動画のBGM。

昔ゲームにはまったことのある人ならどこか懐かしさを感じさせるこの音楽は、なにかのゲームの音楽を流用しているかのように思える。

しかし、よく調べてみると、この曲はこの展示会のためにアメリカの「8Bit Weapon」というアーティストが制作したオリジナル曲で、このような曲のジャンルは、「チップチューン(chiptune)」と呼ばれているとのこと。

そこで、今回はチップチューンについていろいろ調べてみた。


■ チップチューンとは?

チップチューンとは8ビット音楽とも呼ばれ、1980年代の家庭用ゲームマシンに搭載されていた低質な8ビットの音源チップの音だけで作られる音楽のことで、現在では音楽の一ジャンルになっている。

最近はパソコン上にこうした環境を再現することもできるようになったが、厳密には実機(ゲーム機本体)を利用して作成したもののみをチップチューンとみなすという。

テレビゲームの黎明期。低性能の音源チップしか使えなかったこの時代は、性能上の厳しい制約の中でいかにしてカッコイイ音楽を作るかが、ゲーム音楽の制作者にとっての課題だった。

このような環境で、制作者が創意工夫を凝らして作り上げた数々の名曲は、多くのゲームファンを魅了したが、その一方で、創作意欲を刺激される人々や厳しい制約の中で曲を作るというプロセスそのものに面白さを感じる人々を生み出した。


こうした人々によって8ビットマシンを使った音楽が制作されるようになり、これがチップチューン音楽の原点となったようだ。


その独特の音色で奏でられる音楽は、音源チップの性能が向上した1990年代以降も多くのファンを魅了し続け、その後も独自の発展を遂げることとなった。そして、現在では、日本だけでなく、アメリカやヨーロッパ、オーストラリアなど世界中に愛好者を持つ音楽の一ジャンルとして定着している。


チップチューンの楽曲制作に使われるのは、ファミコンやゲームボーイといった1980年代に発売されたゲーム機(実機)。

誰が作ったのかは不明だが音楽制作用の専用ソフトがあり、これをゲーム機に差し込んで電源を入れると、ゲーム機で曲の作成が可能となるようだ。

現在では、パソコン上に実機と同様の環境を構築したり、ゲーム機に直接シンセサイザーを接続して音を出したりできるようになり、音楽制作の手法は多様化したが、やはり本物の音を出すために実機が使われることが多いという。

(注:音源チップ……電子的に音を発生させる機能を持つ部品。このチップの性能によって使える音域や同時に出せる音の数(和音の数)などが異なる。一方、合成できる音声は音源チップに搭載されている「音源」と呼ばれる電子回路の種類によって異なり、ファミコンなどの古い8Bitゲーム機や古いパソコンに搭載されている音源はPSG(Programmable Sound Generator)と呼ばれるもので、ファミコンのピコピコ音はこの音源によるもの。スーパーファミコンなどの次世代ゲーム機には、デジタルシンセサイザーにも採用されているPCM音源方式の音源チップに変更された。この結果、飛躍的に表現の幅が広がったが、それでもメモリ不足による表現の制約は残った。)


チップチューン制作関連の動画

How to Chiptune - Famicon (NES) - #1(Youtube)

How to Chiptune - Famicon (NES) - #2(Youtube)

How to Chiptune - Gameboy - #1(Youtube)

How to Chiptune - Gameboy - #2(Youtube)


■ 日本のチップチューンの現状は?

日本ではチップチューンの黎明期から多くの制作者グループやアーティストによって楽曲の制作行なわれており、一部の愛好者に支持されてきた。


近年では、インターネットで気軽にチップチューンの楽曲を聴けるようになり、チップチューンのサウンドにテクノポップを融合させ、女性ボーカルの歌声を加えた独特の作風で人気となったYMCKがavexからメジャーデビューするなど、より多くの人がこのジャンルが知るようになった。

一方、海外では、ニューヨークで2006年から国際的なチップチューンの祭典「Blip Festival」が開催されているが、2010年には東京でもこのイベントが開催されるようになり、現在では毎年秋に行なわれる恒例のイベントとなっている。


Anamanaguchi at Tokyo Blip Festival 2011 featuring ft. USK

(2011年の「Bilp Festival Tokyo」でのパフォーマンスを撮影した動画のようです。真ん中でゲームボーイを持って演奏しているのが、日本のチップチューンアーティストのUSK氏。ライブ会場で一人だけゲームボーイを持って舞台に立つ男性と熱狂する観衆。なかなかシュールな光景ですが、見ているうちにだんだんかっこ良く見えてくるから不思議です。USK氏の作品はUSK氏のウェブサイトでも聴くことができます。)

YMCK / カレーだよ!

(YMCKのプロモーションビデオ(avexの公式動画)。ポップな曲調と女性ボーカルの甘い歌声。そして、昔のゲームの映像を見ているような楽しいプロモーションビデオ。こうした世界観は若者に受け入れられやすいのかもしれませんね。)

YMCKのオフィシャルサイト

サカモト教授「サカモト教授の8bitジュークボックス」PV

(ニコニコ生放送でもおなじみのサカモト教授さんのチップチューンのアレンジアルバム「サカモト教授の8bit ジュークボックス」のプロモーションビデオ。おなじみの名曲もチップチューンにアレンジすると、また違った味わいがありますね。)

サカモト教授のオフィシャルサイト



テレビゲームから生まれた音楽チップチューン。

その背景には、厳しい制約をあふれる創造力で補い、最高の作品を産み出そうと奮闘する制作者たち姿がありました。


経済のグローバル化が進展し、厳しい国際競争に晒される日本企業。

そんな中で、若者たちには以前にも増して高い創造力が求められています。


限られた条件の中で、最大限のパフォーマンスを目指す。

厳しい国際競争の時代を生きる私たちも、彼らから学ぶべきことが多い気がしますね。


ファミリークッキング

関連記事

テレビゲームは芸術の一様式!?テレビゲームをアートの視点から見つめ直すアメリカの展示会とは?


参考サイト

チップチューン(wikipedia)

Blip_Festival

音源(wikipedia)

Programmable Sound Generator(wikipedia)

PCM音源(wikipedia)

posted by 残照 at 02:14| Comment(0) | 芸術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年03月23日

テレビゲームは芸術の一様式!?テレビゲームをアートの視点から見つめ直すアメリカの展示会とは?

最初の家庭用ゲーム機の発売から今年で40年。

現在では、技術の進歩よって本物と見間違いそうになるほどの高精細な表現が可能になり、映画顔負けの美しい映像表現も見られるようになった。


しかし、ビデオゲーム(テレビゲーム)の黎明期。ハードウェアの性能による厳しい制約の中で、「ドット絵」という独自の表現手段が発達し、多くのゲームファンを魅了したことも忘れてはならない。


こうしたゲーム独自の芸術性を多くの人に知ってもらい、「ゲームは芸術の一様式である」ことを示したい。

そんな主催者の強い思いが込められたゲーム展覧会「The Art of Video Game」が、現在、スミソニアン・アメリカ美術館(米ワシントンD.C)で開催されている。


この展示会の主催者によると、ビデオゲームの実機を使った展示は以前にもあったが、ビデオゲームを「芸術の一様式」として捉えた展示会は今回が史上初。

展示期間は2012年3月16日〜2012年9月30日までの予定で、その後はアメリカ各地を巡回する展示会を開催するという。


Art of Video Games Exhibit in DC

(展示会の様子を撮影した動画。壁に埋め込んだディスプレイにゲームの映像を映し、絵画風に展示するなど、美術展のように見えるように工夫されています。実際にゲームを体験できるコーナーも設けられ、子供から大人まで楽しめる展示会になっているようです。)




ちなみに、この展示会はかつてのゲーム大国として隆盛誇った日本のゲームソフトやゲーム機が多数展示されています。

しかし、近年は携帯電話やスマートフォンなどで手軽に遊べるソーシャルゲームの人気に押されて、日本の家庭用ゲームメーカーは苦戦を強いられてます。

[photo by NoWin]

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(画像はFlickrより引用。昨年、カナダのプリンス・エドワード島(Prince Edward Island)の「International Fox Museum」で家庭用ゲーム機の展示が行なわれたようです。発売した年代別にゲーム機が展示されていますが、ここにも日本のメーカーのゲーム機がたくさんありますね^^)


一方、価格.comが昨年10月に行った男女約8000人を対象に行ったインターネット調査によると、「1年前と比べてゲームのプレイ時間が減った(ゲームを全くしなくなった+とても減った+やや減った)」と回答した人が43.4%に上ったそうです。

また、その理由として「面白いゲームが減った」と回答した人は全体の3割を超える32.3%で、ゲームソフトの質の低下や内容のマンネリ化が、今日の日本の家庭用ゲーム業界の凋落の原因だという声もあります。



そうした声を払拭するためには、やはり斬新な発想で革新的なゲームソフトを作っていくしかありません。

今回のような展示会は、ゲームの制作者が新しいアイディアを生み出すきっかけになったり、携帯電話やスマートフォンでゲームを始めたという新しい層に家庭用ゲームの面白さを伝えるための広報活動になったりするので、現在の日本にこそ必要な試みだと思います。


日本でも、今年、「ITコンソーシアム京都 クロスメディア部会」が、産・学・公が連携してデジタルコンテンツの保存、展示、活用に取り組む「関西デジタルゲームアーカイブプロジェクト(仮称)」と、その拠点となる「京都ゲームミュージアム(仮称)」の設立構想を発表し、長期的な展示を目的とした常設のゲーム博物館の設立に向けて動き出しています。

(参考:<ITコンソーシアム京都 クロスメディア部会企画>クロスメディアを活用した地域活性化 〜 キッザニアなど新機軸集客施設の事例を踏まえて考える『京都ゲームミュージアム』の可能性 〜)


こうした博物館は、ただ過去の栄光を懐かしむだけのものになりがちですが、日本の家庭用ゲーム業界の復活に向けた未来志向の展示になることを期待したいですね。


この記事に関連するサイト

「The Art of Video Game」の公式サイト(英語)


関連記事

古いゲーム機で音楽を作る!?ゲーム音楽から生まれた「チップチューン」とは?


参考サイト

ドット絵(wikipedia)


posted by 残照 at 22:04| Comment(0) | 芸術 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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